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「本当のエキセレント・カンパニーとは」  2002年10月22日  vol.39

■エキセレント・カンパニー

皆さん、エキセレント・カンパニー(優れた企業)と言って、どこの企業を思
い出すだろうか?
SONY・京セラ・GEなどのメーカーとか、モルガンスタンレー・シティバンクな
どの外資金融機関、トイザらス・ヨーカ堂などの小売企業などだろうか。

しかし、C.S.O.Enterpriseでは、これら「従来型のエキセレント・カンパニー」
の定義付けに、一つ大きなことを忘れていると指摘したい。


■エキセレント・カンパニーの定義

一般的にエキセレント・カンパニーの定義とは何だろうか?
「環境に優しい企業」
「経営姿勢が先進的な企業」
「株主や従業員を重視する企業」
「ビジョンが明確な企業」
などが挙げられる。

しかし、重大なことを忘れている。
それは、「子供たち」、あるいは「子供たちの未来」という観点だ。


■SONYの功罪

では、エキセレント・カンパニーの雄、SONYに付いて、ここで取り上げてみよ
う。
SONYは、環境に優しく、経営姿勢が先進的で、誰が見てもエキセレントなのだ
がーーー。
でも、「子供にとって」という視点ではどうなんだろうか?


■ゲーム漬け

ここで少し話を変えてみる。
「ゲーム脳」という言葉をご存知だろうか。
テレビゲームや携帯メール漬けになると、脳ミソの前頭前野という部分が退化
し、若年性痴呆症になってしまう危険性があり、その状態の脳ミソを「ゲーム
脳」と言う。

信憑性に関してはまだまだ議論の余地がありそうだが、ゲーム脳の子供は、顔
の表情が乏しく、言語的なコミュニケーション能力が劣っているという統計も
出ている。

考えてみれば、当たり前のような気がするのは、筆者だけでは無いだろう。
テレビゲームのソフトは、いくらやっても満足出来ないようにプログラミング
されており、大人でも巻き込まれるのだから、子供がすぐに中毒になるのは至
極当然。
本来の子供の遊びは、五感をフルに動かして得た情報や知識を積み重ね、いつ
しか自分の体内で土台となって定着していくのだが、テレビゲームにはそれが
無い。
現に米国では、テレビゲームが注意欠陥多動障害に影響ありとの報告も出てい
る。

そして、子供のゲーム脳なんかお構いなしにどんどん新しいゲームを開発販売
している先陣を切っているのがSONYである。

別に、SONYの経営者の質、開発技術力、ブランド云々を言っているのではない。
「子供に悪いもの」を作っている、ただそれだけを言っているのだ。
作っている本人達も、「子供への悪影響」を認識したことは一度ならずともあ
ることだろう。
もちろん、中には子供のオツム開発にメリットを与えるものもあるだろうし、
SONYがやらなくても他のソフトメーカーがやっただろうが、それを言っちゃ始
まらないからね。

そう、SONYのようなゲーム関連企業は、「子供に悪影響を与えると本人達がわ
かっていても、平気でそれを市場に出し続けている」というのが事実である。


■同じようなケース、100円ショップやトイザらス

これと同じようなケースが、多くのエキセレント・カンパニーで見受けられる。
例えば、ややピークを超えたかもしれない100円ショップ。

確かに、あんなに安くモノが手に入るのは、喜ばしことかもしれない。
でも、子供たちに対し「モノの有り難さ」ということを育成することへの阻害
要因の一つにはなっているはずだ。
大量の折り紙が100円、ミニチュア自動車が100円では、「はい、買ってもらい、
飽きたらポイ」になってしまうのも致し方ないだろう。
それに、誰が考えても、環境破壊の大きな要因になっている。
100円で作ろうが、1万円かけようが、ミニチュア自動車を製造し廃棄すること
に関して発生する環境破壊、環境への悪影響は同じ量である。
よって、消費されればされるほどGDPには貢献するが、環境には悪い、エントロ
ピーの増大以外の何者でも無い。

モノの大切さという教育では子供に悪影響を及ぼすのと同時に、子供たちが直
接その影響を受ける将来の環境破壊に繋がっている、その一つが100円ショップ
などの激安小売である。

同じことは、急成長のトイザらスなどにも当てはまる。
500円でぬいぐるみを3個も与える必要性がどこにあるのだろうか?
プラモデルの値段が400円では、完成できないからって途中で投げ出し、捨てて
しまう子供を養成するだけではないか。
しかも、環境破壊というのがくっついて。

そう、激安小売店は、「子供たちに悪影響を及ぼし、子供たちの未来を奪うだ
ろう環境破壊の要因に繋がるような、安物玩具や商品を提供し続けている」と
いうのが事実である。


■CNNなどのマスメディア

エキセレント・カンパニーで必ず挙がるのが、米国のCNNや日本のフジTVなど
のマスメディアだ。
でも、果たして、子供のためにどれだけ役に立っているのか?
子供にどれだけ悪影響を及ぼしているのか?

マスコミへの批判めいたことは、いくら書いても紙面が足りないので、割愛す
るが、例えば昨年の米国テロ事件を思い出して欲しい。
ハイジャック飛行機がトレードセンタービルに突っ込んだ映像を、何度も何度
も流していた。ほとんどのメディアで。
さすがに、相当なる非難が出たので、数ヵ月後には姿を消し始めたが。

でも、多くの子供たちの目には、あの「悲惨なる映像」が焼きついてしまった
のは、もはや取り戻せない事実だ。不可逆性なのだから。
確かに人間として、あの映像を見てみたい、あるいはメディアのプロ意識とし
て伝えたいというのはある。
でも、子供の目に焼きついてしまうほど流す必要性があるだろうか?

このような事象は、毎日のようにメディアから発信されている。
そう、エキセレント・カンパニーと言われる多くのメディアは、「子供に悪影
響を及ぼす映像を、平気で流しまくっている」というのが事実である。


■マンション会社

超高層マンションが、ややピークは過ぎたものの、まだまだ大量に売り出され
ている。
で、超高層マンションは、規模が大きいのと販売力が必要ということから、そ
のほとんどが大手のデベロッパー、不動産会社が開発している。
そして、そのほとんどがエキセレント・カンパニーと言われているのだ。

ここで、ある統計を持ち出してみる。
細かい数値は割愛するが、マンションの高層部分に住んでいる家族には、登校
拒否とか引きこもりなんかの子供が多いらしい。
また、日中いる主婦にも、ノイローゼが多いとの事らしい。

これって、言われなくてもわかるような気がするよね。
だって、子供は、20階も30階もエレベーターを降りないと外で遊べない。
子供だけで遊ばせたくても、親の目が届かないので、どうしても親同伴となる

親も、なんとなく部屋から出るのが面倒くさくなり、ついつい外には出なくな
る。
部屋から外を眺めても、空と遠くの景色とアリのように小さい人間だけしか見
えない。

こんな生活空間では、登校拒否や引きこもり、ノイローゼが発生しない方がお
かしいよね。
でも、開発業者はお構いなしだ。売れればいいので。
(もちろん、地価の高い都内にマンションが購入できるようになったという、
大きなメリットも市民には与えているが。)

そう、エキセレント・カンパニーと言われる多くのデベロッパー(不動産会社、
開発業者)は、「子供の育成に悪影響を及ぼす高層マンションを、売れるから
ってどんどん開発している」というのが事実である。


■ほかにもたーくさん

こんな例は、たーくさんあって、いくら書いても書ききれないので、あと少し
だけ書いて止めておく。

マクドナルドはどうだろうか?
あんな食べ物が子供の体にいいと思う人は何人いる?
でも、あれは子供にとっては美味しいよね、家庭で作るホウレンソウの煮付け
よりは少なくとも。

モルガンスタンレーなどの金融会社(投資銀行)は、世界的なエキセレント・
カンパニー。
でも、彼らの儲けは、わけのわからない金融工学(金融技術)を駆使しての、
デリバティブとか金融商品。
あれを買ってハッピーになった人がどれだけいるだろうか?
で、あのような投資理論を子供も習うべきだってホザいている。
米国では「子供のうちに株式投資理論を」なんて方針があるそうだ。
でも、カブトムシの捕り方と、株式投資理論、どっちが大切なんだろうか?
株式や金融理論を子供が学ぶことが、どれだけ子供にとって良いことなのだろ
うか?

SAPは、BPRという経営基幹ソフトを売りまくって、世界的エキセレント・カン
パニーの仲間入りをした。
でも、あれによって、確かに経営を効率的に、ってことにはなったが、経営に
は人間的なこと、アナログ的なことが重要であることを、子供たちの頭から取
り去ってしまうソフトでもある。
信じられないかもしれないが、BPRを子供たちにも教えているのだ。そう、「効
率だ」「効率だ」「効率だ」という呪文と共に。


■C.S.O.Enterpriseでは

ではC.S.O.ピープルとしては、どのような企業をエキセレント・カンパニーと
認定しようか?
もうお分かりだと思うが、こう考えている。
そう、「子供たちに良い影響を与える」企業、それだけでいい。

こう書くと「概念的にはわかるが、でも儲けなくてはね、企業は」っていう反
論が聞こえてくる。
そんな方々には、次のことをお伝えしたい。

最近、SRIという投資形態がブレーク寸前だ。
SRIとは、Social Responsibility Investmentの略で、「社会的責任投資」と訳
されている。
これは、環境、福祉、社会、その他人間生活に対し、好影響を与える企業にだ
け投資をしていく投資形態、あるいは投資ファンドのことである。
社会的責任とは、社会に対し、企業としての責任を果たすことっていうことで、
要は企業の責任とは社会に好影響を与えること、ってことなんだろう。

英国や米国ではこのSRIという基準を用いた投資形態や投資ファンドがかなりの
規模に発展している。
従来の「利益を上げ成長性のある企業」に投資しようというスタイルから、
「社会的な責任を果たしている企業」に投資しようと変わってきているのだ。
で、日本にもSRIは随分前に上陸し、いよいよブレークするかもっていう段階。


■チルドレンズ・ベター・インベストメント

で、筆者は、更にSRIを進化させ「Children’s Better Investment(CBI)=
子供に好影響を与える企業への投資形態」ってのはどうだろうかと考えている。

いくら環境に優しくても、それを享受するのは、今そこにいる子供たち。
環境に優しくないものは、子供の将来の生活を脅かすものだ。
だから,Children’s Better Investment(CBI)には、環境に優しいっていうの
も当然入る。
でも、環境に優しいからって子供たちに好影響を与えるとは限らない。

よって、子供に好影響ってのは、環境などよりも上位概念にくるのである。
CBI投資、あるいはCBIファンド、誰かご一緒に組成しませんか?
絶対に流行ると思いますがね。


■そのうち

補足だが、米国では、タバコを吸って肺ガンになった人が、タバコ会社を訴え
ている。
「タバコを販売した企業が悪いんだ」って。

これと同じようなことが、前述した具体例で起こるのではないだろうか?
「子供に悪影響を与えるソフトを開発した」企業を訴える、不良少年を抱える
親からの訴訟なんてね。
あるいは、「子供が骨粗しょう症になったのはマクドナルドのせいだ」とか。
それこそ、「インターネットを開発した米国という国を訴える」なんて人も出
てくるかもね。

ちなみに、ソフトにしろ激安商品にしろ、企業よりも、「買う消費者」の方が
悪いんだよ、っていう意見も出ることだろう。
確かに、粗悪なゲームソフトを子供に与え、お小遣いで買いたいだけ玩具を買
わせ、高層マンションに住んでいるアホズラ母親も居ないではない。
でも、それを言っちゃダメだよ。
やっぱ、提供する方が悪いんだよ、この世の中は。


■最後に

何も、SONYやマックが悪い企業だなんて言ってませんよ。
そうではなく、優良企業、エキセレント・カンパニーの基準に、是非とも「子
供への影響」ってのを入れましょうっていう提言です。

そして、C.S.O.ピープルたちは、企業の参謀となったり、ビジネスを進める上
で、この考え方を是非とも取り入れてください。
企業はゴーイング・コンサーン(永続性)だっていうことは良く知っています
よね。

ゴーイング・コンサーン、その恩恵を受けるのも、被害を受けるのも、そこの
砂場で遊んでいる子供たちです。

テレビゲームで敵をやっつけて喜んでいる子供の笑顔と、お山でドングリを拾
って喜んでいる子供の笑顔、どっちがホンモノの笑顔か、言わなくてもわかり
ますよね。
ならば、ホンモノの笑顔を作り出すことに貢献する、そんなビジネスや企業を
目指しましょう、C.S.O.ピープルさん。

では次回――。



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「日朝会談をビジネスの視点で」 2002年9月24日  vol.38

■北朝鮮問題

経営者やその参謀(を目指している)CSOピープルの皆さんへ、今回は「北朝鮮
問題」を取り上げてみる。

と言っても、このメルマガは政治や外交に関してがメインではなく、あくまで
経営や戦略を解説することに主軸を置いている。
よって、先週の小泉首相訪朝関連を、ビジネスや経営的な視点で見てみた。

それは、賢明なCSOピープルは、
1)木を見て森を見ずにならないように
2)Yes、あるいはGoodから入るように
3)MECEな論理ツリーで考えること
4)アカウンタビリティーを間違え無いこと
5)主張を曲げないことと理念を貫くことは別
ってこと。

■木を見て森を見ず

マスコミを中心に、右を見ても左を見ても、小泉訪朝へのブーイングや不満が
続出し
ている。
しかし筆者は「今回の小泉訪朝は総論では成功した」と考えている。
(もちろん、拉致問題の関係者の方々には、成功したとは言えないだろうが)

■会談自体に意義あり

そもそも、北朝鮮というのは全ての重大事項を金正日が決断している。
その金正日と直接日本のトップが会談した。例え数分間程度だろうが、殆ど結
論が無かろうが、会談自体が成果だ。

拉致問題や不審船問題などは、どれもが北朝鮮によって「嫌な」要求、聞きた
く無い話である。
どこの社会でもそうだが、自身に決断権限が無い人は、そんな嫌な話しを上司
に伝えたくないもの。
で、いくら北朝鮮の高級事務官クラスと交渉を続けても、その多くが「ハダカ
の王様」化している金正日には正確には伝わらないのである。

だからこそ、直接小泉首相が会談し、ある程度の要求と、厳しい表情を見せた
こと、これ自体に大きな価値があるのだ。

前述したように、マスコミも一般人も、その多くが拉致問題や不審船問題を声
高に論じ、会談の結果や調印内容をぐちゃぐちゃ言い過ぎている。
あまり日本側がこの問題を強調すると、「木を見て森を見ず」の逆効果になる
ことが多いにあると認識すべきだろう。

■ビジネスでも同じ

これは、ビジネスでも全く同じことが言える。
よく、交渉結果、会議結果、あるいは社内稟議の内容を見て、文句タラタラ言
う「重箱つっつき人間」がいる。
重箱をつっつくのは勝手だが、それによって全体を見失い、価値あることを逃
してしまい、時間を無駄にしてしまうことを考えて欲しい。
要は、交渉も会議も稟議も、何が最も重要なのか、どこに最大のフォーカスを
すべきなのかを見極め、それが出来れていれば、総論OKなのである。


■Yes、Goodから入る

前述したことは、「物事はYes、Goodから入るほうが得策」ということの教訓に
も言いかえられる。
ところが、日本の論調は、「何をやってんだよ、小泉首相は!」、「外務省かけ
しからん」、「そもそも北朝鮮なんかにコメなんかあげるなよ」的なことが多い


■クレーム、イチャモンから入ると

クレームやイチャモンから入ると、物事が前に進まないことに気が付くべきだ。
今回、もし日本中で沸き起こっているクレーム的論調をそのまま北朝鮮にぶつ
けたとする。
ほぼ間違い無く、金正日は、亀のように甲羅にもぐってしまうか、キレ少年の
ようにキレてしまうだろう。

もし、イチャモンを首相や政府に言い続け、内輪げんかみたいなことを繰り返
していると、北朝鮮からも、あるいは全世界からもバカにされるだけだろう。

また、もう一つ言えることは、クレームやイチャモンから入ると、それに直接
的に関係している人々は、非常に嫌な気持ちになり、場合によっては反発を、
場合によっては気持ちが萎縮してしまうものだ。
だって、それなりに一生懸命やった結果に対し、「よくがんばったな。でもこの
問題は残っているぞ」と言われるのと、「何やってんだよ、この問題が残ってい
るのに」では、言われた方の感じ方は180度異なる。

■ビジネスでも同じ

ビジネスでも同じだよね。
部下の新企画提案、上司からの指示、同僚の業務内容。
それらに対し、「Yes, but---」で入るのと、「No、---」で入るのとでは、そ
の後の成果に大きな開きが出ることは想像に難くない。

もちろん、中には、全くダメなこともある。
あるいは、本人が手抜きをし、いい加減にこなしたような場合には、最初から
「No」で入るのもいいだろう。
でも、1%でも成果や良さがあり、且つ本人が一生懸命やっている限りは、
「Yes、but---」から入るべきだ。

ちなみに、英字新聞を読んでいる限りは、欧米の多くが今回の日朝会談に対し
て「まずはGoodだね」と述べている。


■MECEの論理ツリー

ビジネスでも政治でも、課題や問題を解決する基本的手法に「MECEによる論理
ツリー」と言うのがある。
MECEとは、ある課題に対して起こりうること、可能性のあること、影響を及ぼ
すようなことを全て、且つお互いが重なり合うこと無く取上げることだ。
例えば、「利益を上げたい」という課題に対し、「売上を伸ばす」、「費用を
削減する」という2つのことが、影響を及ぼすことであり、それぞれは(例外
を除き)重なっていない。

で、論理ツリーとは、ある課題に対してMECEで取上げた項目を、どんどん下部、
枝のように伸ばしていく作業である。
利益を上げたいに対してMECEで取上げた一つが「売上を伸ばす」であった。
今度は、「売上を伸ばす」に対して、「販売数量を増やす」、「販売単価を上
げる」、などがMECEにより取上げられる。
こうやって、どんどん枝のように伸ばしていくことを論理ツリーと言う。

■北朝鮮問題では

北朝鮮問題でもしMECEの論理ツリーをやるとしたらこうだろう。
最初に来るのが、「拉致問題の解決」とか、「安全保障」、「借金返済」など
だろうか。
そして、「拉致問題の解決」を、更にMECEで細分化し、更に細分化したものを
またまた細分化する。
これらの課題それぞれに付いて、「MECEの論理ツリー」をやっていくと、必然
的に、政治家や官僚は、何をやるべきか、何が最も重要なのか、が明確になっ
てくるはずだ。

それら分析により、重要事項とか優先事項を明確にさえしていれば、これほど
国民からブーイングは起こらなかったのでは、と筆者は考える。

■ビジネスでも同じ

この手法の詳細は、もしご要望あれば別途メルマガで述べてみるが、要は「課題
解決のために、一つの空間も無しに、且つ重なり合いも無しに、パズルを埋めて
いく」というMECEを、どんどん枝のように伸ばしていく、ただそれだけである。

すると、どんな会議でも、どんな課題でも、どんな戦略でも、今やるべきことは
何か、最優先課題は、どこにフォーカスすべきかが明確になっていく。
個人の時間も、会社のリソースも、全て有限、限りがある。
それを、散発的に使うのと、論理的に考え効率的に使うのとでは、おのずと結果
には大差が生じていく。


■アカウンタビリティー

MECEで述べたこととは、拉致リストの通知遅れ問題にそのまま当てはまる。
よく、ビジネスの世界では「アカウンタビリティー=説明責任」が取上げられて
いる。

ところが、間違ってはいけない。
説明責任は、ビジネスにも政治にもあるのだが、どれもこれもってのは不可能
なこと。
あるいは、説明を受ける方にしてみても、全ての情報なんて聞けるはずが無い。

■説明を誰に求められているのか

アカウンタビリティーを考える上で最も重要なのが、「誰に説明を求められてい
るのか」、まずはその一点である。
企業であれば、株主や債権者が「誰」に当たる。

では、北朝鮮問題の「誰」とは誰か?
言うまでも無く、国民である。そう、政治や役所の世界の「株主は国民」という
ことを忘れていたのが、今回の問題を起こした要因である。
外務省の株主は、首相でも大臣でも無い。国民ってことを。

■何に最大の関心を持っているのか

そして、「誰」が定まれば、その人々が持っている最大の関心事を定めること
がアカウンタビリティーでは、次に重要となってくる。
今回の株主である国民は、言うまでも無く「拉致問題」だ。

そりゃ、不審船も、正常化も、戦後補償も、関心はそれなりに持っている。
でも、あーんまし関係無いよ、って思っている人も多いだろう。
ところが、拉致問題は、直接関係しているご家族の方々のみならず、多くの国民
が「何とかしてあげたい」、「かわいそうだよ」、「どうなってんだろう」と高
い関心を持っていることは、何よりも明らかだ。

誰が何に関心を持っているか、アカウンタビリティーの基本さえ守っていれば、
「翻訳に5時間かかった」という言い訳が、本当だとしても、もっと良い対処を
していたことだろう。

外務省も政府も、「バタバタと混乱していた」とも言い訳している。確かに本当
だろうが、「どんなことでも混乱というハプニングは起こり得る」のだ。
だからこそ、どんなことに対しても、アカウンタビリティーの基本を守り、そこ
に説明者としても最大の関心を払うべきなのだ。

■ビジネスでも同じ

最近、不正事件が多発していて、且つそれらに対する企業のアカウンタビリティ
ー責任が問われている。
消費者相手の商売をやっている食品メーカーは、「株主である消費者」の最大の
関心事は「安全」ってこと、バカでも判るよね。
電気を売っている企業もおーんなじ。

これは、部下が上司に対しての説明責任、上司が取引先に対しての説明責任も同
じである。
説明を聞く権利を持っている人の最大の関心事、これに関することへのアカウン
タビリティーには、何にも増して「関心を払う」べきなのだ。


■主張と理念

最後に、総論Goodの小泉首相も、反面教師とすべき点がある。
その一つが「主張と理念」を勘違いしていることだ。

小泉首相は「拉致の真相解明なくして正常化なし」と主張している。
これは、まるで「構造改革なくして景気回復なし」という主張と同じ。

でも、拉致問題と正常化を、どうしても結びつける必要ってあるのだろうか?
正常化したって、拉致問題が解明されなくちゃ意味が無いし、拉致問題解明さ
れなくても他の課題があるので正常化が必要な場合もありえる。
あえて、それを並列にリンクさせ、それに拘る必要がどこにあるのだろうか?

同じように、構造改革は絶対やるべきだし、景気回復も待ち遠しい。
でも、別の問題だよね。お互い相関しあってはいるけど、切り離すべき時はある

いつまでも強硬にリンクさせる必要なんてどこにあるのだろうか?

■理念を曲げないこと

よく、立派な経営者、優れた企業には、「信念を貫くこと」、「理念を曲げない
こと」ってのがある。
この「頑固さ」、「強硬さ」は、確かに必要である。いや絶対必要だ。

ところが、主張と信念、主張と理念を同一にすることは、大変な問題である。
主張ってのは、もっとフレキシブルに柔軟性を持ってやらないと、これだけ多様
化している、複雑化している経済や政治の場面では、「単なる頑固オヤジ」と化
してしまうだろう。

■ビジネスでも同じ

俺はこう思う、って決めたら、絶対に曲げようとしない経営者や幹部が多い。
一方では、理念や信念のかけらも見うけられないクズ経営者も多々いる。

主張を絶対に曲げない経営スタイルでは、これだけ早い時間軸で、これだけ高度
化しているビジネスの世界では、直ぐに大きな波に船が真っ二つに割れてしまう
だろう。

理念も信念の無い経営スタイルでは、大きな波に直ぐに飲みこまれてしまうだろ
う。
そう、主張には柔軟性を持たせながら、確固たる信念・理念を定めること、しか
も双方を同一視しないことが重要だ。


■最後に

木を見て森を見ずにならないよう心掛け」、「Yes、but--ー」から入り、MECE
な論理ツリーで考えながら、アカウンタビリティーを間違えず、主張を曲げな
いことと理念を貫くことは別だと認識すること、これが経営者やそれを支える
CSOの絶対必要条件の一つですよ。

まさか、そこらへんのマスコミに同調して「重箱イチャモン付け人間」になん
かなっていませんよね。
ではまた次回。




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「失敗を生かそう」  2002年9月9日 vol.37

■転んだ後

皆さん、子供の頃、しょっちゅう転んでヒザ頭にカサブタを作っていたことだ
ろう。
でも、大人になった今、あんまし転ばないよね。

皆さん、好きな人に恋心を打ち明けたものの、完膚なきまでに断られた経験あ
る?
でも、その経験があるからこそ、次は違った打ち明け方をしたよね。

■失敗

企業経営には失敗が付き物。
失敗が全く無い企業なんて、世の中には一社も無い。
ここまでは、100社あれば皆同じ。
で、違うのが、失敗した後のこと。
そう、失敗を活かすのか、失敗から逃げるのかという違い。

■東京スター銀行

最近、「東京スター銀行」が紙面を賑わせている。
破綻した東京相和銀行を、外資のローンスターが買収して設立した銀行だ。

で、何が賑わせているかというと、続々破綻している中小の銀行の「受け皿」
的存在に、同行がなっているってこと。

■なぜ同行だけが

破綻した銀行を受け継ぐのは、別に同行だけの特権ではない。
東京三菱だろうが三井住友銀行だろうが、誰が受け継いでもいい。
しかし、最近破綻した銀行を受け継ぐ、その多くが結果的には東京スター銀行
になっている。
なぜか?

破綻銀行を受け継ぐには、見えない不良債権が多く紛れ込んでいる可能性とい
う、大きなリスクがある。
また、受け継ぐ際には、スステムの統合、国との折衝、従業員の引継ぎなど、
膨大な骨折り作業が待っている。

で、美味しそうだけど結果的には受け継ぐことに、多くの銀行が二の足を踏ん
でいるのが現状。

一方、東京スター銀行は、自らが破綻した経験を活かし、「銀行という複雑な
事業の受け継ぎ」に関して、一日の長がある。
言い換えれば、自分の破綻歴を、他の破綻銀行を受け継ぐという、新しいビジ
ネスチャンスの構築に活用してしまったのだ。

そう。もし「破綻」という失敗をそのままにしていたら、東京スター銀行は、
ほとんど紙面に登場することは無かっただろう。
だが、失敗という「貴重な経験」をノウハウに転換し、ビジネスチャンスを
構築したのである。

■他の例

このような例は、たーくさんある。
住友商事は銅の不正取引で膨大な損失を被った。発生の原因が「社内のリスク
管理が未熟」であったこと。
これを、「失敗しちゃったから、このようなビジネスからは撤退しよう」とい
うのが一般的だろう。
だが、住友商事は、その際に、徹底して社内リスク管理を向上させ、今では
「リスク管理」というノウハウを外に売っている。

新生銀行は、東京スター銀行同様、自らが破綻経験ある。
破綻した際に、不良債権の売却をたーくさん行い、結果的に、それに関連する
弁護士とのやりとり、法律的な手続き等に関してのノウハウを誰よりも持って
いる。
で、今は、そのノウハウや人脈を活かし、どの銀行よりも「不良債権関連」の
ビジネスでは、勝っている部分が多い。

山一證券には、破綻した際に、たーくさんの優秀な社員がいた。
その一部の者たちが、独立して「破綻した企業」の再生をビジネスとしたベン
チャーを成功させた。

■失敗から得るもの

”失敗は成功のもと”、使い古された言葉だが、改めて再認識すべき時に来た。
とかく日本は、「失敗=退場」という図式が未だにある。
ベンチャーを起業して失敗すると、「もうあいつはおしまいだ」と言わんばか
りに、金融機関は手を引き、世間からは冷たく見られる。
社内で失敗した事業は、「だからあんな事業はダメだと言ったんだ。もう二度
とやるな」とオジサンたちがこれ見よがしに突き放す。

でも、失敗という事実は既に発生したわけだし、それはそれで多々議論してい
く一方で、失敗から学んだものをどうやって活かすかを、常に考えるべきであ
る。
だって、失敗しちゃったことは、それだけ取れば取り返しがつかないんだから。

■最近の流行

で、最近、こんな事例が見られる。
畑村洋太郎さんという機械工学専門家が、「失敗学会」というのを設立した。
様々な失敗事例を分析し、今後に活かす道を探るのが目的で、みずほ銀行のシス
テムトラブルも研究対象に入っている。
今では、たーくさんの講演や私塾を行っているそうだ。

JR東日本では、脱線や衝突のみならず、制限速度をオーバーしたとか、停止信号
を見落としたなどの失敗までを、同社研修センター内に展示し、社員に公開する
そうだ。

東京商工会議所は、失敗から学ぶセミナーをベンチャー企業向けに開催した。

ある高校の野球部では、「負ける練習」をさせているとか。その監督曰く「人生
はかっこいいことばかりではなく、ぶさまに負けることの方が多い。だけどそん
な経験をした人間だけが強く優しくなれる」とのこと。

■失敗から逃げないこと

以上より、失敗自体は褒められるものではないが、いざ発生した際には、逃げな
いでその活用法を必ず考えることを心がけたい。
失敗を犯した本人達は、責任を負わされ、周りからは責められ、どうしてもその
場から逃げたくなる。
失敗を見た上司は、どうしても「何やってんだお前は」と叱りつけたくなる。
失敗から被害を受けた企業は、「もうあの事業はキレイさっぱり忘れて撤退しよ
う」とそこから立ち去る。

でも、大変貴重な財産を、皆が置き忘れているのだ。
そう、失敗から得た貴重な経験やノウハウという財産を。

■最後に

転んだら、次からは母親がいつも「転ばぬ先の杖」役をしてくれた子供。
大きくなっても、転び方を覚えていませんよね。

失恋したら「また断れるのが嫌だから」って二度と恋を打ち明けなくなってし
まった人。
その後も、ステキな恋愛はしていないことでしょうね。

たくさん転び、痛さを覚え、転ばない歩き方を身に付けること。
たくさんフラれ、どうやったら気に入ってもらえるかをとことん考えていくこ
と。

これって、企業の経営やビジネスの進め方と、全く同じですね、
そこの彼・彼女!

では、また次回。







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