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「自立成長型の人の、ファイナンス」  2003年11月19日 (第83号)


▼▼今週のテーマ▼▼ >>ファイナンス

お金、資産、借り入れ、投資、収入....。
これらに関することを総じて「ファイナンス」と言います。

で、今号から何回かに分けて、
自立成長型の人になるためのファイナンスを解説して参ります。

「要は、たくさん収入を得るようにすることだろ!」
「金持ち父さんみたいなことを言うんだろう!」

というご意見の方は、是非、お見逃しなく。
そんな単純な話ではありません。


▼反面教師君

「何もしないで20%の利益、是非この商品に投資しませんか?」
こんなうたい文句にホイホイ乗ってしまう反面教師君。

宵越しの金は持たない主義の反面教師君。
いつも、パチンコ代に使うために5万円のカードローンが
残高として残っている。

親から遺産で引き継いだ土地を持っている反面教師君。
「マンション建てたらこんなに儲かりますよ。」
ってことに目がくらみ、多額の借金を背負ってしまった。

安物買いの銭失いが特徴の反面教師君。
「激安」の言葉に弱く、直ぐに手を出してしまうが、
買ったものの多くが、1年後にはゴミ箱行き。

口説きたい女の子がいる反面教師君。
ようやく彼女を食事に誘うことが出来、3万円のフルコースに案内。
結果は、”オジャン”。


▼ファイナンス

ファイナンスって?
ファイナンシャル・プランナーがアドバイスしているようなこと?
不動産などに投資すること?
お金をどこから調達するかなどについて?

もちろんこれらのことも含まれます。
但しそれは、自立成長型の人になるためのファイナンスのごく一部。

では、どのようなことをファイナンスと言うのか?
どんなことが、自立成長型の人になるためのファイナンスなのか?
それらを解説する前に、いくつかの設問を出します。

ファイナンスって、ちょっと難しそうだし、
イメージが沸かない人もいるだろうから、今号は頭の準備です。


▼計画の実行か断念か?

*設定
自立成長型の人になるには、良い投資をして資産や利益を増やすこと。
そう考えた貴方は数年前、投資用に1,000万円で土地を購入。
資金は全額、貯金(自己資金)で。
ところが地価下落によりその時価は300万円にまで下がっている。

せっかく保有している土地を更地にしておくのはもったいないと考え、
その土地に200万円かけて、賃貸用駐車場を作る計画を立てた。
200万円については、金利5%での銀行借入を考えている。

この事業を行った場合、毎年20万円キャッシュフローを
受け取ることが予測されている。

*設問
貴方は、この駐車場事業という投資を行うべきだろうか?

*解答
回答は、「断念」です。やらないほうがいいでしょう。

200万円の建設費かけて20万円のキャッシュフローが入ります。
利益率10%となり、銀行からの借入れ金利の5%よりも高いので、
投資は行うべきだと誤解してしまいそうですが。

詳細は、今後解説する「機会費用」、「埋没費用」、「永続価値」、
「投資の評価」あたりをご覧になって下さい。

まず、1,000万円の土地だが、時価が300万円になっているので、
その差額700万円は埋没費用として、
新規の投資実行の検討には全く考慮する必要はありません。
投資判断に考慮する額は、現在の時価の300万円だけ。

次に、時価300万円ということは
更地のまま転売すると300万円のキャッシュが手に入ることを意味します。

ところが、駐車場事業を開始することにより、
その300万円のキャッシュを手にする機会を逸することになる。
この300万円を機会費用といいます。

よって、駐車場事業の投資額は
土地代300万円(機会費用)+建設代200万円(新規投資)
=500万円と考えるべきなのです。

この500万円と、新規の駐車場事業から得られる将来のャッシュを比較し、
後者が大きければ投資実行、小さければ断念すると判断すべきです。

将来得られるキャッシュの合計額の計算方法は、
毎期のキャッシュ20万円/借入コスト(金利)5%=400万円となります。
(算式については、後日説明します)

以上より、将来得られるキャッシュ400万円は
投資額500万円より小さいので、投資は断念すべきだと判断するのです。


▼投資判断?

*設定
自立成長型の人を目指している貴方は、
独立してネットビジネスを本格化させようと考えている。

独立する際の初期必要資金は1,000万円、独立後の年間収益は500万円。
つまり、投資に対する収益率は50%と予想されている。

但し、いきなり1,000万円をかけるのもリスキーなので、
まずは、100万円だけかけて、副業として、同じようなネットビジネスを
手がけてみることにした。

「これはイケる」と判断された場合には、本格的に独立することとし、
副業から本業に転換させることとした。

副業の収益率を予測したら20万円の利益、
つまり20%の利益率しか得ることが出来ないとの結果が出た。
「思ったより利益率が低そうなので、このビジネスへの進出は辞めよう。」
という結論を下した。

*設問
この判断は正しいだろうか?

*解答
上述だけではどちらとも言い切れませんが、
少なくとも、50%の利益率が達成出来そうもないということだけで
断念したのであれば、その判断は間違っています。

後述する「オプションの概念」をご覧になって下さい。
事業を断念した瞬間に、それを手に入れるチャンスも逃したこととなります。

ところが、トライアルで100万円の費用をかけ、
とりあえず進出のための足がかりをつけておくことと、
そのためのマーケティングを行うことは、
その結果次第では、もっともっと利益を達成出来る「可能性」も残っている。
誰もが1年後、2年後のことはわからないので。

ここでかけた100万円というトライアル費用は、
そのチャンス・可能性を手に入れるための「チャンス獲得費用=オプション料」
と考え、都度判断していく必要があります。

利益を手にするチャンスを丸々逃すのか、
利益を手にするチャンスを将来に向けて保持するために
多少のオプション料を払うのか。

そのように「オプション」という概念を取り入れることは、
自立成長型の人が用いるべきファイナンスの基本です。


▼資産を手に入れる

*設定
自立成長型の生活を送ろうとしている貴方は、
新規に自動車を、リースで手に入れることにした。
そして、機能や性能が同一の、次の2つの自動車のうち、
どちらを選択するか悩んでいるところ。

N社製品は、自動車の年間リース代金を含めた固定費が50万円/年、
燃費から換算した燃料代が、10円/1km走行。

T社製品は、同じく固定費が40万円/年、
燃料代が、15円/1km走行。
となっている。

*設問
貴方は、どのような状況であれば、N社の自動車を選択することが
投資効率上得策だろうか?

*解答
年間2万km以上を走る予定であれば、N社の自動車を選択すべきであり、
それ未満であればT社を選択すべきである。

後述する「クロスオーバー分析」によると、その分岐点となる使用個所Zは、
Z=(50万円―40万円)/(15円―10円)=2万kmとなる。
よって、年間2万km以上の走行予定であれば、
N社自動車製品の方が安上がりとなります。


▼資本収益率かトータル収益額か?

*設定
自立成長型の人になるための一環として、
貴方は副業で、経営コンサルティングをやることにした。
但し、時間的制約により、年間で1社しか出来ない。

ある時、知合いから次の選択を提案された。
1 貴方自身も1,000万円出資し、経営コンサルする企業に、
一緒に投資をしようということ。
その際の想定される利益は、年間300万円。

2 貴方は100万円の出資だけでいいので、
経営コンサル事業を一緒にやろう。
その際の想定される利益は、年間50万円。

*設問
貴方は、自ら投資して300万円の収益を得ることを選択すべきか?
あるいは、経営コンサルに徹して50万円で甘んじるべきか?

*解答
絶対額(300万円)をどうしても必要としていない限りは、
50万円の経営コンサルに甘んじるべきです。

1の選択である自己投資では、1,000万円の投下資本に対し300万円の利益。
つまり30%の利益率です。

一方、自己投資はしない場合、100万円の投下資本に対し50万円の利益。
つまり50%の利益率です。

もちろん、この利益率以外でも検討すべき項目はいろいろありますが、
「リスクを減らしながらリターンを増やすべき」というこの時代、
極力、投下資本(=リスク額)を減らしながら、収益率を高めていくこと。
それが重要となります。


▼反面教師君は?

以上の設問は、少し堅苦しく、難しすぎましたかね?
というわけで、もう少し身近な例として
冒頭の反面教師君に戻ります。

「何もしないで20%の利益、是非この商品に投資しませんか?」
こんなうたい文句にホイホイ乗るのは、得策ではありませんね。

利益(リターン)を得るには、必ずリスクがあります。
20%の利益を得るには、20%のリスクが内在している。

まずはこう考えるのが基本中の基本。
とかく、目の前に見える利益や利益率に注目が言ってしまいがちですが、
その裏にあるリスクも同じ量くらいあると思うほうが、
間違いはありません。

宵越しの金は持たない主義の反面教師君は、
パチンコ代に使うために5万円のカードローンがある。

もし1ヶ月我慢したら、5万円は返済でき、ローンはゼロとなる。
一方、現状では、ローンの金利は10%。
1ヶ月の我慢をすると、1ヶ月に使えるパチンコ代が、
5万円x10%=5,000円も増えることを理解しておくべきですね。

親から遺産で引き継いだ土地を持っている反面教師君。
「マンション建てたらこんなに儲かりますよ」
ってことに目がくらみ、多額の借金を背負ってしまった。

マンション建てた場合のトータルの獲得資金と、
土地を売却した場合の獲得資金。
それで比較すべきだということを忘れていますね。

安物買いの銭失いが特徴の反面教師君。
「激安」の言葉に弱く、直ぐに手を出してしまうが、
買ったものの多くが、1年後にはゴミ箱行き。

服だろうが家具だろうが、買い物も投資です。
何を買うかは、表面的な価格もさることながら、
長期的な視野で、その損得を考えるべきですね。

口説きたい女の子がいる反面教師君。
ようやく彼女を食事に誘うことが出来、3万円のフルコースに案内。
結果は、”オジャン”。

いきなり3万円ってのは、リスクが高過ぎるのでは。
また、誘われる方も、重荷になってしまうはず。

女性(男性)を口説くのも「投資」です。
そして投資には「一か八か」ではなく、
「リスクを見据えながら徐々に」という考え方があることを
頭に入れておきたいですね。


▼最後に

預金や投資をする。
これはもちろんファイナンス(投資)です。

女性(男性)を口説くためにお金を使う。
服や家具を買う。
これもファイナンス(投資)です。

こう簡単に割り切ることは出来ないでしょうし、
割り切る必要もありません。

但し、ファイナンスの基本型を理解しておくと、
より効果的な投資が出来ますね。


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▼▼次号のテーマ▼▼  11/26配信

>>ファイナンスの基礎

なんとなく、ファイナンスとは何か?
その概念だけでも理解した。

でも、概念だけでは何の役にも立たない。
次週(11月26日)は、
ファイナンスの基本について、お送りします。




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「自立成長型の人、マーケティングの仕上げ」  2003年11月12日 (第82号)


▼▼今週のテーマ▼▼

自立成長型の人になるためのマーケティング。
貴方の周辺の人々が、貴方に何を期待しているのかを考え、
その価値を定め、そして、貴方の良さを伝えていく。

マーケティングについて、述べてきましたが、
いくつか忘れていたことがありました。
今号は、自立成長型の人になるためのマーケティング。
その仕上げです。


▼反面教師君

「相変わらずダメねー」
って、過去の恋人だったらしい男が、電車でマンガを読んでいる姿を見て、
キャリア女性が独り言をつぶやいている日経新聞のCM、ありましたね。
これって、反面教師君のこと。

ことあるごとに「電話番号教えてー」が口癖。
そして「俺のアドレス帳には、たくさんの女の子の携帯番号がある。」
って、自慢げに話す彼も、反面教師君。

何度か食事に誘い、その度にご馳走してあげた女性にプロポーズ。
ところが「お付き合いは出来ないわ。」って断られた。
「あんなにご馳走したのに、付き合ってくれないなんて、ざーけんなよ。」
って、不満タラタラも、反面教師君。


▼新商品開発

「あのお店って、変わりばえがしない。」
って、旧態依然で何ら新しさが無いお店は、飽きられるのも早いですね。

成長している企業は、常に新しい商品(サービス)を提供し続けています。
特に、消費者のニーズが多様化し、流行の回転が速くなった今の時代は、
新しいモノを提供出来なくなった企業は、衰退以外の道はありません。

これは、人にも言えること。
仕事人として、人間として、常に新しい機能、能力、魅力を、
第三者である上司や顧客、家族や恋人たちに提供し続ける。
それが、自立成長型の人になるための、唯一の道です。

自分を変える必要はありませんが、
昔と同じレベル、成長が無い、新しい魅力が見出せない。
そんな人は、「過去の人」ということで捨てられてしまう時代です。

というわけでマーケティングの仕上げ。
いくつか取り上げますが、まずは「新商品開発」について。

前に述べました通り、貴方も「1つの商品」に自分自身を置き換え、
新商品の開発に心がけましょう。

決して、時代に迎合しろ、ということではありません。
もちろん、古いものは全て捨てて、常に新しい方がいい、
と言っているわけでもありません。


▼例えば

自立成長型の人になるための、新商品開発とは?
例えば、経理の知識がある"自立君”。
経理の処理をすることが、彼の商品です。

そして「経理処理だけではなく、経理のコンサルティング機能。」を
新商品として加えることにした。
いわゆる、昨年までより進化・進歩した商品の提供となるわけです。

ソウルバーにやけに詳しい"自立君”。
彼女に提供する「商品」は、ステキなソウルバーへの案内というサービス。
新しく、「お薦めソウルCDを厳選してあげる」という機能を
加えることにした。

このように「既存の商品やその機能」に、何か新しいことを加える。
これも商品開発です。

IT化により、どこもかしこもデジタルの時代。
だからこそ、ITの知識や使い方を学んでいくのではなく、
逆に「アナログ」について、徹底的にその専門性を高めていく。

これは「こういう時代だからこそ、アナログが必要となるだろう。」
という見込み(読み)から、自分の新商品として「アナログ知識の提供」
を加えていったもの。

このように、貴方という人に新商品を開発し加えていくこと。
これをやっていくことを、「貴方の新商品開発」と言います。


▼新商品開発のプロセス

では新商品を開発するには、どうしたらいいでしょうか?
それは、
商品コンセプトの開発→仮説の検討→商品化→提供開始
というプロセスを経ることです。

どんな新商品を、上司や取引先、家族や恋人・友人たちは望んでいるのか。
その中で、貴方に加えることが出来ることは何か?
貴方の既存の商品(機能・長所・経験や知識)を活かせることは
あるのか?
などを考え、新しい商品(貴方の新しい機能)を考えるのが第一の
プロセスです。

次に、その新しい商品が、どれだけ周辺の人々に受けるのか?
具体的に何をどうやって提供することが出来るのか?
具体的に貴方はそれを取り入れ、加えることが出来るのか?

など、仮説を立てて検討するのが、次のプロセスです。

そしてそれを商品化します。
商品化とは、例えば新しい知識ならその勉強を開始し、
学んだことを実践に活かせるように具体的に置き換えることです。

いずれにせよ、プロセスの中で最も重要なのが、
「新商品アイデアをたくさん生み出す」作業。
アイデアが生まれない限りは新商品も生まれないので。

よって、貴方自身の生活において、
新しいアイデアを出し続ける習慣をつけておくことが重要です。

「上司は、どんな新しいことを私に望んでいるのだろうか?」
「何をやれば、彼女は喜ぶのだろうか?」
「どんな機能を提供することが取引先の満足度向上に繋がるのか?」
などを、いつもいつも考え、具体化させる。
そんな習慣化が必要ですね。


▼新商品開発のアプローチ

貴方という商品に、新商品を開発する際、
自然にアイデアが生まれるのであれば苦労はありません。
では、どうすればいいアイデアが思い浮かぶのか、
そのアプローチの種類としてニーズ型発想とシーズ型発想というのが
あります。

ニーズ型発想とは
「周辺の人々にはこんなニーズがあるようだが。」
「それを満たす方法はないだろうか?」というもので、
顧客ニーズから新商品を発想し開発していくアプローチです。

シーズ型発想とは
「こんな新しい技術やサービスが世に生まれた。」
「こんな新しい資産や知識が私の手に入った。」
「これを活かして、何か周辺の人々に利用できないだろうか?」
というもので、手に入れたモノから新商品を発想し開発していく
アプローチです。

多忙で超スピード時代。
だからこそ、癒しというニーズが生まれた。
そのニーズを満たす「癒し型」の人に人気が集まっているのも、
納得できる話である。
これってニーズ型。

情報洪水の今。
「誰か、最適な情報を選んで欲しい」というニーズが生まれた。
そのニーズを満たす「コンシェルジェ」が、百貨店でも飲食店でも
引っ張りだこ。
これもニーズ型。

単なる経理マンだった自分が、あるプロジェクトで顧客から相談を受けた。
それに応えるために一生懸命勉強。
結果的に、顧客のソリューションが出来る専門性が身に付いた。
これを、他の顧客にも活かそう。
これがシーズ型。

大好きなソウルバーに通っていたら、自然にソウルCDに詳しくなった。
その詳しさを、彼女にも提供してあげよう。
これもシーズ型。


▼価値戦略

マーケティングの仕上げ。
次に挙げるのが、「貴方の価値」です。

商品の「マーケティング」には、価格戦略というのがあります。
要は、いくらでその商品を売るかという戦略のことで、非常に重要です。

それは、価格とは、企業の収益に直結しているからだ、
というばかりではありません。
価格って、顧客に最もダイレクトにメッセージを訴える手段、
つまり提供する商品・サービスの価値を金銭的尺度として顧客に伝える
ということでもあるのです。

例えば、安値競争で価格を下げることが常套手段となっていますが、
「あのお店は、いつも安売りしている」というイメージを
顧客に植え付け、
ブランド価値を下げていくという影響などがその例です。

これを「貴方商品」におきかえてみましょう。
貴方商品の価格(価値)って?

それは、金銭的な価格は、給料などのこと。
時間的価値という意味では、貴方が第三者に提供する時間のことです。
あるいは「他人のために使う労力」と置き換えてもいいです。

これを「なんでもやりまっせ」とかいうスタイルで安売りする人。
以前によく耳にした「アッシー君」のような使い走りになる人。

これでは、前に述べた安売りのお店と同じになってしまいます。
あくまで自分の中で、「私の価格(価値)はこれくらいだ」
というのを定め、それを維持向上させる気持ちが必要ですね。

安売りほど、安直で簡単なことはありませんので。


▼価格設定

では、貴方の価格(価値)をいくらくらいに設定すればいいのか?

よくありがちなのが、コスト(原価)から逆算する方法です。
商品の場合、製造や販売に関わるコスト(原価)に、一定の利益を乗せ、
最終販売価格とする場合があります。
いわゆる「損は絶対にしない価格」ですね。

これは、売り手が優位な場合にのみ通じる話。
物不足の時代、あるいは売り手が独占企業の場合は、それで通じます。

ところが今時、こんな価格設定ではお客さんは満足しないでしょう。
他社との競争、お客さんの満足度。
それを満たすためには、「価格設定はお客さんだ」というくらいに
割り切るべきです。

同じことが人にも当てはまります。
「こんなに努力したのに、なんで上司は認めてくれないんだ。」
「朝から晩まで働いているのに給料が低い。」
「あれだけ尽くしたのに、俺をフル彼女は許せない。」

これは、前に述べた「コスト逆算」で価格設定する商品と同じです。
こんな努力も、朝から晩までの労働も、あれだけ尽くしたことも、
全て「貴方商品」を提供するためにかかったコストです。

で、それだけのコストをかけたのだがから、それなりの見返りが欲しい。
これは、売り手の一方的な理論。
どれだけ見返りをするかは、買い手である貴方の周辺の人々が決めるもの。


▼広告他

自立成長型の人になるためのマーケティング。
その仕上げの最後に取り上げるのが、
「広告」、「チャンネル」、「既存顧客」です。

まずは広告。
文字通り「貴方商品」を第三者に広告すること。
商品同様、メディア、ネット、クチコミなどいろいろ方法はあります。

その中で最も重要な方法は、クチコミです。
これは一般の商品も同様。
いくら色んな広告媒体があると言っても、クチコミに勝るものはありません。

では、人の場合のクチコミとは何か?
言うまでもなく、周辺の人々が持っている貴方の噂ですね。

で、効果的なクチコミの方法とは、「拡散させるクチコミ・リーダー」
を見つけ出し、
その人に対し集中的に「貴方のいい噂」をイメージ作りすることです。

会社の同僚に、事務の女の子、取引先。
近所に人、学生時代の友人。
誰か居ませんか? クチコミ・リーダーとなれるような人は。

「自立君って、外見と違って優しいみたいね。」
「自立君って、自己主張しないけど、仕事上でスゴイ成果を上げている。」
そうなると、もう貴方の広告は自然発生的に拡散していきます。


▼流通チャネルとは

商品は、何かの手を介してお客さんに提供されていくわけで、
その“何か”を流通チャネルと言います。
お米であれば農協、問屋、米屋がそれに該当。

では「貴方商品」にとっての流通チャネルとは、
どんなものがあるのでしょうか。

例えば、貴方の直属の上司(部長)から仕事を頼まれた。
で、貴方は素晴らしい仕事振りを発揮。
でもそれが、更なる上司(社長)には伝わらない。
貴方の将来を決めるのは、その更なる上司。

この場合、流通チャンネルをダイレクトにする必要があります。
間に入った「流通業者」が邪魔をしているため、
貴方という商品が正確に、最終消費者である「更なる上司」に
伝わっていない。
ならば中間排除が必要となるわけです。

例えば、貴方は、ゲットしたい彼女の親友に良く思われている。
その場合、最初のうちは、その親友を介して貴方商品を届ける。
これは中間排除とは逆ですね。
あえて中間を入れる方が、貴方商品の魅力を、より効果的に
彼女に伝えてくれることでしょう。


▼既存顧客の維持

次に、既存顧客の維持について。
マーケティングには、新規に来場者を獲得することと、
既存の顧客を維持し囲い込む目的の2種類があります。

従来は、新規獲得に目が行きがちであったが、
最近は「既存の顧客がリピーターになってもらう。」、
「既存顧客が、何か新しい商品にもお金を使ってもらう。」
という既存顧客の維持・囲い込みに重点が置かれるようになってきました。

それは、莫大な費用をかけての新規顧客獲得よりも、
既存顧客の購買量の増加、リピート率の向上の方が
費用対効果が高いからです。

同じことが人にも当てはまります。
貴方商品を買ってくれた第三者。

彼・彼女に対し、もっともっと買ってもらうようにすること。
これが、新しい第三者を増やすよりも重要です。

「俺のアドレス帳には、こんなに多くの女の子の携帯番号があるんだ」
よくこんな自慢をしている男性がいます。
これって「バッカみたい」の典型。

「俺には知合いが多い。だから忙しいんだ。」
これが自慢の男性は、リピート率が極端に低いことでしょう。
「あいつとは二度と会うもんか。」って、
しょっちゅう陰口を言われているはず。

「芸能人の○○を知っているぜ。有名人の□□も知っている。」
それがどうしたの?って感じ。
○○さんも□□さんも、なんとも思っていないのがオチ。

そんなことよりも、もっと中身が濃く、深い間柄で、
長期間つきあっている知合い、彼女、友人。
数は少なくても、そっちの方が、何十倍も価値があります。


▼最後に

自立成長型の人になるための「マーケティング」。
今号で終了です。

さて、「自分という商品」、
どうやってマーケティングしますか?
商品開発。
販売戦略。
ブランド化。

どれもこれも重要です。
あたかも貴方自身が「ヴィトン」に「ベンツ」になった気持ちで、
これらマーケティングを行ってみて下さい。

成長企業の命は、マーケティング。
顧客あっての企業であり、成長の源は顧客。
自立成長型の人も同じですね。


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▼▼次号のテーマ▼▼  11/19配信

>>ファイナンス

お金、資産、借り入れ、投資、収入....。
これらに関することを総じて「ファイナンス」と言います。

で、次号から何週かに分け、
自立成長型の人になるためのファイナンスを解説して参ります。

「要は、たくさん収入を得るようにすることだろ!」
「金持ち父さんみたいなことを言うんだろう!」

というご意見の方は、是非、お見逃しなく。
そんな単純な話ではありません。
次号(11月19日)をお楽しみに。




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「自立成長型の人のコミュニケーション術」  2003年11月5日 (第81号)


▼▼今週のテーマ▼▼ >>コミュニケーション

自分という商品を磨き上げた。
それをラッピングするファッションにも気を使った。
それでも、顧客(周辺の人々)は、自分を買ってくれない。

何故か?
それはコミュニケーションに問題があるからです。
では、コミュニケーションって何?


▼反面教師君

ある新規プロジェクトについての会議。
反面教師君は、単なるオブザーバー(傍観者)として
参加するように、上司から言われた。

ところが何を血迷ったのか、
「A君が企画しているこのプロジェクトはダメです。」
「それよりも、私がもっといいのを考えました。」と発言し、
プレゼンテーションを始めてしまった。

会議参加者からは「君の意見は聞いていない。」と大クレーム。
上司からは「お前は引っ込んでいろ。」と怒りが飛んできた。

後日、反面君の考えていた企画は、ライバル会社が実行し大成功。
上司からは「お前もこれくらいの企画を考えるよな。」の一言。


自他共に魅力的な男性である反面教師君。
ついに、すごーく好きな女性が見つかった。

彼女も反面君のことを良く思っているらしい。
との情報を得た反面君は、いきなり
「好きです、今度デートしませんか?」
と突然のEmailを送った。

ところが意外にも彼女からは、全く返信無し。
何度か「どうでしょうか?」と催促したが、結果は同じ。

後日、その彼女が親友に漏らしていた言葉を聞いた。
「反面君のこと、私もいいなーって思っていた。」
「でも、何ら気持ちの準備もなく、あまりにも突発すぎ。」
「だから、どんどん気持ちは後退していったのです。」


▼ここで言うコミュニケーションとは

以前も、コミュニケーションについて語ったことがあります。
但し、その際のテーマは、
「他人を上手く使いこなすためのコミュニケーション」

一方、今号で述べるコミュニケーションとは、
「自分の魅力、自分という商品を、お客さんである周辺の人々
に伝えるためのコミュニケーション」。

一応、以前お話した、他人を使いこなすためのコミュニケーション。
要約すると以下の通りです。

他人に何かを依頼したり、関係を構築する際、
一番大切なのは、何と言っても「コミュニケーション」。

効果的なコミュニケーションを行うには、
自分をさらけ出すという自己開示、
自分の考えを表に出すという自己表現、
相手の話をよく聞く傾聴、
そして、明確な表現が大切。

コミュニケーションが上手くいかない場合(人)には、
主に以下の問題が考えられる。

送り手の問題:
相手に好意的に見てもらおうと、貴方が情報を操作することが
コミュニケーションの阻害要因となることがある。
恋人に気に入られたいばかりに、明確な依頼や注意が言えないなどが
その一例。

受け手の問題:
情報の受け手である相手が、
複数の情報から、自分の好みで特定の情報を選択する場合、
受け手に関するコミュニケーションの阻害要因となる。
例えば複数の部下からの情報の内、一緒に飲み歩いている部下からの
情報を選択してしまうなど。

双方の問題:
送り手と受け手の間で、年齢、性別、地位などが異なると、
同じ文章でも違った解釈をしてしまう、文化的差異というのも
コミュニケーションの阻害要因となる。

いずれにせよ、コミュニケーションとは、「相互に意思疎通が出来た」
場合のみを指すのであって、
「言っただけ、言いっ放し」はコミュニケーションとは言えない。
が要約です。


▼今号のコミュニケーション

自分という商品、あるいはその魅力を、
意中の女性、今の恋人、家族、仕事仲間、取引先、上司、友人など
第三者に伝えること。

それが、今号で述べるコミュニケーションです。
繰り返しですが、上記のように貴方の周辺にいる第三者は
あくまで、貴方という商品やその魅力を買ってくれるお客さん。
そう思って、読んでみて下さい。


▼相手に伝える

コミュニケーションとは、メッセージや意思の送り手が
受け手に対し伝達すること、あるいはその手段のことです。
メッセージや意思の送り手が貴方。
メッセージの内容は、貴方の魅力、強みなどのことや、
具体的な伝達事項。

反面教師君。
魅力的な人なのに、意中の女性(男性)をゲット出来ない。
優れた提案書なのに、誰も受け付けてくれない。

中身が良くても、相手に伝わらない限りは、
単なる宝の持ち腐れ、意味がありませんね。


▼買うプロセス

よって、どうやったら効果的に、貴方のメッセージを
お客さんである周辺の人々に伝えることが出来るのか、
それを検討し実践していくことが求められます。

そこでまずは、周辺の人々が、貴方という商品を買うに至るまでの
そのプロセスを把握しておく必要があります。

自動車を購入するケースを思い浮かべて下さい。
購入するには、
その車がどんなものか、性能やスタイル、価格などを理解し、
その車が好きになり、
購入する候補の1つとなり、
購入することを決定し、
購入を実行。

実際には、このような「購買プロセス」を経ているのです。

人は商品では無いですが、あくまで例えとして、
貴方を、第三者である女性(男性)が恋人として選択する場合も、
実際には同じようなプロセスがあるかもしれません。

まず、貴方という人間を理解し、
貴方のことが好きになり、
恋人候補としてノミネートされ、
恋人になるという意思が固まり、
恋人となる。

同じように、仕事上で上司に出した貴方の提案書。
上司は、貴方の提案書内容を理解し、
その提案内容が気に入り、
新規ビジネスの候補として取り上げられ、
新規ビジネスに決定され、
実行。


▼コミュニケーション手段

これら5段階に渡るプロセス。
それぞれの段階ごとに、コミュニケーション手段は異なります。
そして、現在、貴方が自分という商品を伝えたい相手が
どのプロセス段階にいるかを把握した上で、
最適なコミュニケーション手段を実行していきたいものです。

そのためには、次のような流れでメッセージを伝えていく。
まず、相手に対して注意を促し、次に興味を持たせ、
欲求を喚起し、そして動機付けを行っていく。

注意を促すには、いきなりダイレクトに意思を伝えてはダメです。
反面君が失敗したのもそれが要因。
自分の存在が他と異なること。
自分の魅力を、さりげなく伝えること。

それによって、「おーい、ここにいい商品があるよ」
って、相手の注意を促すのです。

次の、興味を持たせるためには、
相手がいつも、どんなことに関心を持っているか?
そこに絞ったコミュニケーションをとることです。

人は、基本的には興味のあることにのみ、
きちんと聞いて、頭にインプットします。
興味の無いことは、耳を貸しているだけ。

伝えたい相手が持っている数ある興味の中で、
貴方が実際に伝えたいメッセージに少しでも関係があるものは何か。
かなり遠回りでも、関係が薄くても構いません。

そして、欲求を喚起するには、
相手にそのニーズを起こさせるようなコミュニケーションをします。

「興味がある」だけの段階から、「手に入れてみたい」という段階に
持って行くためのもの。

「すっごく面白い話が聞けそう」と思わせるのでもいい。
「なんか素晴らしい企画かもしれないな」って感じさせるのでもいい。

最後は、動機付けさせるようなコミュニケーション。
最後の一押しを促すような手段です。
そう、背中を押してあげるのです。


▼パーミッション

ここで1つ、視点を変えてみましょう。
パーミッション、つまり「許し」。

TVコマーシャルや新聞広告、電車の吊り広告。
あるいは街中のキャッチセールスや、
ブティックで後ろを付いてくる店員などを思い浮かべて下さい。

あれらって、一方的ですよね。
貴方が望んでもいないのに、一方的にメッセージを送ってくる。

広告宣伝や人的販売など一般的なコミュニケーション手段は、
お客さんに対し、一方的にそのメッセージを伝えてきます。
お客さんは、見たくも無い宣伝を目にしたり、
はた迷惑な営業マンに時間を取られることさえあります。

その中、最近注目を浴びているのが、パーミッション(許しを得る)
というマーケティング(コミュニケーション)手段。

これは顧客に対し「許しを得てから購買に誘導していくマーケティング手法」。
許しを得るとは、顧客がその情報を知りたいと感じている、
あるいは情報を欲しいと希望しているような状況にもっていくことです。

例えばアンケートはがきやネットでの意見は、
その第一段階として「許しを与える準備段階」にあります。
そして、「では貴方が欲しい情報を送りましょうか」という第二段階を経て
「情報を下さい」という行動に移り、
初めて許しを得てからのコミュニケーションの実行となる。

一般的な宣伝広告は、お客さんの許可も無く顧客の目に触れされるため
「土足マーケティング」とさえ言われる中、
「いかに顧客に許しを得るか」を考えた上でのコミュニケーションですね。

そして、これを貴方に当てはめてみるのです。


▼例えば

反面教師君。
いきなり「好きだから、デートして」では、断られても仕方ありませんね。
だって、土足マーケティングだから。

「アイツの企画よりも私の方が優れている」っていうのが第一声では、
迫力ありますが、ちょっとシラーって来ちゃいますよね。

デートに誘うにしても、
「好きです」とか、「デートしたいです」というメッセージを、
送ることが彼女から許されてから行う。
デートの許しを得るよりも何よりも
デートしたいというメッセージを送ることの許しを得るのです。

自分の企画を売り込むにしても、
売り込んでいいと上司が思ってから売り込む。
企画の承認を得るよりも
企画を提案することの許しを得るのです。

この「送ることの許し」を得ることは、
遠回りのようですが、その方が、早い場合が多いですよ。


▼最後に

「なんで、あんな男が、彼女のようなステキな女性と付き合っているのか?」
「どうして、大した事も無いアイツの企画ばっかりが、採用されるのか?」

なんていう愚痴や疑問、耳にしませんか。
その解は1つ、コミュニケーションが上手いからです。

人は、ベストのものを選択したいと思っている反面、
自分の選択はベストだと思い込みたいと、無意識に考えちゃうもの。

売れる商品は、その性能もさることながら、
消費者の心をうまく掴んでいます。
そして消費者は、買って満足。
そのベースとなるのが、商品から消費者に向かうコミュニケーション。


▼マネジメントの方へ

我が社は、良い商品を製造しているのに売れない。
我が部署は、いい仕事をしているのに、社内の評価が低い。

これは、マネジメントのコミュニケーションに問題があるからです。
良いものを、より良く思わせて、第三者に伝える。
企業IRにしろ、広告宣伝にしろ、
それを指揮するマネジメントが、どこまでコミュニケーションを重視
しているか。

結局は、重視しないと、良くても売れない、評価されない会社(組織)
になっちゃうのですね。


▼▼次号のテーマ▼▼  11/12配信

>>マーケティング、言い忘れたこと

自立成長型の人になるためのマーケティング。
貴方の周辺の人々が、貴方に何を期待しているのかを考え、
その価値を定め、
そして、貴方の良さを伝えていく。

マーケティングについて、述べてきましたが、
いくつか忘れていたことがありました。

次号(11月12日)は、マーケティングの残りです。




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「自立成長型の人のファッション」 2003年10月29日 (第80号)


▼▼今週のテーマ▼▼ >>ファッション

ファッション

自立成長型の人であるブランド人は、
ファッションにも細心の気を払っています。

もちろん、ブランド品の服を買い揃える。
そんな安易な方法ではなく。

今号はファッションについて。
貴方は、キレイな包装紙でラッピングされているけど、ノンブランド君?
それとも、身の丈にあった包装紙でラッピングされているブランド君?


▼反面教師君

「今日はきまったな!」
と鏡に映る全身像にご満悦の反面教師君。
そう、待ちに待った彼女との初デート。

ところが1ヵ月後、「別れましょう」というEmailが彼女から来た。
「貴方って、最初の時に受けたイメージと全然違うのね、がっかりしたわ」
というのが、別れの理由らしい。

「イケねー、遅刻だ。」
と、そこら辺にぶら下がっているスーツやネクタイを身に付けた反面君。
仕事に行くファッションには、全く無頓着のようだ。

そんな反面君、仕事能力は自分の方が上なのに、
どうしても、仕事の結果は同僚に負けてしまうらしい。

「おー、この服いいなー」
って、直ぐに手を出してしまう反面君。
だから、クローゼットはいつも満員。

ところが、いつも着ていく服の組み合わせが決まらない。
たくさん持っているのに。


▼自立成長君

自立君、待ちに待った彼女との初デート。
着ていく服は、お気に入りのカジュアル服。
そして1ヵ月後、恋愛関係絶好調。
彼女いわく、
「彼って、最初の時に受けたイメージと中身が同じなの、よかったわ」

「今日は、ハードな交渉がある日だな。」
「ならば、ちょっと攻撃的なタイとシャツの組み合わせにしよう。」
と、念入りに服を選び、着こなしていく自立君。

仕事に行くファッションは、
その日の気分、仕事内容、天気、自分のキャラ、最新モード
などを総合的に考え、上手に着こなしている。


▼ファッション

9月10日から連載している、”自立成長型の人になるためのマーケティング”
その中で、最も身近な項目が、今号のファッションです。

商店で売られている商品。
CMやカタログなどで、宣伝広告をし、
商品をパッケージに入れ、
お客さんの目を引くような販売をし、
売れたら、キレイな包装紙でラッピング。

企業経営で行われているマーケティング。
これら広告宣伝やラッピングなどは、その行為の一環ですね。

このメルマガでは、貴方自身を「商品」として見立てるべきだと、
何度も述べてきています。
だから、上述した広告やラッピングを、
自立成長型の人も考え、しっかりと行う必要があるのです。
そして、その1つが「ファッション」。


▼ちょっとお尋ねします

お尋ねします。
「カッコいい服を着ていますか?」
「ファッションに気を使っていますか?」

但し、カッコいい服とは、別に、高い服とか、
最先端の流行を指しているわけではありません。
ファッションに気を使っているとは、
別に、お洒落をしまくることを言っているのではありません。

ちなみに、消防士の制服、油まみれの自動車工のつなぎ服、
これらはとっても素敵でカッコいい。


▼ブランドの乱発

最初に、反面君のファッションに付いてお話します。
よくありがちなのが、「ブランド品の乱発」。

頭のテッペンから足の先まで、名のある高級ブランドで身をまとう。
しかも、それぞれに統一性と言うか、ポリシーが感じられない組み合わせ。
更に、自分の現在置かれている知見や地位とはかけ離れた高級さ。

これって、最悪ですよね。
高いものを身につければいい、著名なブランドであれば見栄えがいい、
っていう安易な発想以外の何物でもありません。

せっかく、たくさんのお金をかけているのに、かわいそう。
かえってみっともないものです。


▼黒スーツに紺タイ

次にありがちなのが、「個性の無いファッション」。

以前、オジサンの多くがグレー系の同じようなスーツを着ているのを見て、
「どぶネズミ」と悪口を言っていた人たち。
彼らに多いですね、個性無しファッション。
オジサンのことを言っている場合ではないですよ。

特に多いのが、黒系の三つボタンのタイトスーツに、
濃紺のタイを太めの結び目で付けている。
少しばかりのロンゲか、ちょっとディップで固めたショート、
そして幾ばくかの髭。
なんとも個性の無いことったら、ありゃしない。

合コンで、右から左まで、参加者全員が同じスタイル、同じファッションで、
気が狂いそうなくらいに笑ってしまった某女の子がいたそうです。
だって、三面鏡を開いてみているみたいだって。


▼ユニクロ的

同じことが言えるのが、「ユニクロ系」、「GAP系」の男たち。
これは、いろんな世代の人々に言えることです。

ユニクロが急成長した後に落ち目になったのは、
皆が一気に手を出したから。
どこを歩いても、同じチノパン、同じTシャツ、同じフリース。

そもそも、ユニクロやGAPを着ていると、
どんなセンス無しでも、最低限のレベルはクリアしてしまうのですよね。
それがいけなかったのでしょう。皆が皆、走ってしまったのですね。

でも本当に、あのタイトなチノパン、裾短めジャケットが、
自分にフィットすると考えてから着ているのでしょうか。


▼スーツに白い靴下

折角ステキなファッションをしていても、ある一点で全体が台無しってことが
よくあります。
その典型例が、靴下ですね。どうしても気を抜いてしまうのでしょう。

例えば、上から下までビシっと決めた。うん今日はカッコいい。
でも、濃い目のスーツなのに、靴下が白いってオトコが、結構いるんですよね。
しかも、ゴムがゆるんで、すね毛が見え隠れしている。

なんで、それ以外のファッションは完璧なのに、
たかが数百円で買える靴下の手を抜くんでしょうね。

同じように、ステキなパンツなのに、ベルトが長すぎて一周半しているとか。
完璧なVゾーンなのに、Yシャツのエリ元から下着のシャツが見えているとか。


▼その他

その他、こんなファッションを見たことがあります。
ミラノでは、短パンTシャツ姿に、ウェストポーチで、
あの高級ブティック街を闊歩、
エトロやグッチに入っていく人達。

バンコクでは、真夏のリゾート服なのに、
スーツ時に履いている黒い革靴に黒い靴下。

NYでは、免税店で、
高級ブランドのネクタイを束ねてつかみ取り。


▼ファッションとは

で、ここで言いたいのは、別にファッション雑誌ではないので、
どんなファッションがステキかということではありません。
ファッションの重要性を述べたいと思います。

ファッションとは、その人を見せる、最も手っ取り早く、
最も効果的で、最も重要なことです。

男性読者の中には、
「オトコは服装なんかではなく中身だ。」と反論される方々もいるでしょう。
でも、それは単なる逃げ口上です。

ファッションとは「制服」です。
ファッションとは「自分を表すもの」です。
ファッションとは「自分を効果的にPRする武器」です。

お店で売られている商品が、広告され、パッケージ化され、
店内ではお客さんの目を引くような工夫をし、
売れたらラッピングする。
そのどれをサボっても、売れ行きにマイナスとなります。

商品である貴方も同じ。


▼ファッションを真剣に考えるべき

だからこそ、もっともっと、ファッションに気を使うべきでしょう。
そう、お金では無く、気を使うのです。

ビジネスの世界では、その日の予定に合わせてスーツを選ぶことが、
エグゼクティブの基本。
今日はハードな交渉が待っている。
今日は重要な社内会議。
今日はお客さんを接待する。

それぞれに合わせて、
タイからシャツ、スーツ、靴、カバン、時計、メガネを
組み合わせているのです。


▼ファッションの考え方

では、Private Brainがお薦めする、
ファッションへの基本的な考え方を説明します。

一つ目は、「ここ一点で気に入ったブランド」を定め、
それを中心に組み合わせをすること。

例えば、靴は何といってもコールハーンだとすると、
あとは、コールハーンの靴にあったスーツ、シャツなどを組み合わせる。
そう、ある一点に、あるお気に入りブランドを決め、
あとはそれにフィットした組み合わせにしていくのです。

他の一点でもいいです。
ベルトはエルメスだけにするとか、シャツはAOTAだけ、
ジャケットはキトンだけ、バックはバリーだけーーー。
どれでもどんなブランドでもいいです。お気に入りであれば。


▼ベーシックを決める

次に、結構安易に出来るお薦めとしては、
ベーシックなスタイルを決めること。
ベーシックなスタイルとは、アメリカン、ヨーロピアンなどのこと。
モード系、クラシコイタリア系、トラディショナル系などのこと。

どんな区分けでもいいので、
自分にフィットしたベーシックを決めると、後は楽です。
間違っても、パンツがアメリカントラッドで、
ジャケットがイタリアン・カジュアルなんていう、
恐ろしい事を避けることが出来ます。


▼自分のロール・モデル

自分のロール・モデル(目指したいモデル)を決めることも得策。
ロール・モデルは、芸能人でも著名人でも同僚でも、誰でも結構。
「あ、あんなファッションがいいな。」、
「あの人のようになりたいな。」と思う人、ファッションのことです。

これって、安直なやり方のように見えるかもしれませんが、
コーチングという手法ではよく使う基本動作です。

で、ロール・モデルが定まったら、まずは徹底的にマネしてみること。
徹底的に。

そして、どれだけ自分の生活スタイル、体のスタイルにフィットして
いたかを、後日検証してみることですね。
その繰り返しで、いつのまにか、定めたロール・モデルが、
自分流に変身していることでしょう。


▼自己主張が出来るファッション

結構お薦めなのが、
「安くても自己主張出来る」ファッションです。

周りで多くの人が身に付けている、値段の張るブランド服よりも、
安くても自己主張出来るファッションの方が、
何倍も価値があります。

30代40代の人は記憶にあると思いますが、
昔、テニスが流行った頃、多くの学生がタッキーニのポロシャツを着ていた。
学生にしては高値の2万円も出して。

でも、2万円もするほどの効果がありましたか?
多分無いですよね。だって、右も左もタッキーニ。

それに対し、ちょっと変わったTシャツとか、
自分流の重ね着をしていた人、
かけたお金が2千円でも、効果抜群だったと思います。

高い金を出して、皆と同じような格好をするよりも、
安いお金で自己主張出来る格好の方が、効果抜群なんです。


▼自分ブランドを作る

自分ブランドを作り上げることが、ファッションにも求められます。
前号で述べた「ブランド人になろう。」
を、もう少しファッションに特化させてみて下さい。

ファッションという視点でいうブランド人とは、
「あの人はいつもこんなようなファッションをしている。」
「あの格好を見れば、あの人を思い出す。」
という、自分の代替をしてくれるようなファッションを持つことです。


▼最も重要なこと

以上、ファションの基本的考え方を述べてきましたが、
1つ、重要なことを忘れていました。
それは、「自分という商品の中身と、身につけているファッション」
に整合性、統一性を持たせること。

あるいは、自分のライフスタイルやポリシーと、
自分のファッションが同一であること。

冒頭の反面教師君。
折角、お洒落しているのに彼女に振られたのは、
中身と包装紙(ファッション)が、あまりにも異なっていたからでしょう。

中身が100円ショップ商品なのに、ヴィトンの包装紙でラッピングしても、
直ぐにボロが出るのと同じ。

100円ショップ商品にも、ヴィトンにも、それにふさわしいラッピング。
当り前の話ですね。
それを「自分という商品」のラッピングにも当てはめることです。


▼最後に

でも、やっぱり、制服ってカッコいいと思います。
警官、消防士、旋盤工、匠(たくみ)、柔道家。
制服を着ている姿、カッコよくて似合っていますよね。
自己主張していますよね。
職業に自信を持っていますよね。

それは、「その職業を表す」もの、「PRする」ものだからです。
人のファッションも同じ。
週末カジュアルだろうが、平日スーツだろうが、
貴方の制服なんですよ、会社に来て行く服は。


▼マネジメントの方へ

キャノンの御手洗氏、日産のゴーン氏、オリックスの宮内氏ーー
ハンサムではないかもしれませんが、カッコいいですよね。

ゴーン氏は、専門のイメージコンサルタントを付けていて、
ちょっとした隙間時間に、ファッションを含めた「外見、包装紙」
のブラッシュアップに努めているとか。

ソニーの出井氏などは、ファッション専門家とも対等に話が出来るそうです。

マネジメントは、会社のこと、仕事のことで超多忙。
ファッションのことなんかに構ってられないっていう意見をよく耳にします。

でも、大切な包装紙、パッケージ。
いくら中身が美味しい果物でも、パッケージが汚らしかったら、
半値半がけでしか売れないでしょう。


▼▼次号のテーマ▼▼  11/5配信

>>コミュニケーション

自分という商品を磨き上げた。
それをラッピングするファッションにも気を使った。
それでも、顧客(周辺の人々)は、自分を買ってくれない。

何故か?
それはコミュニケーションに問題があるからです。
では、コミュニケーションって何?
次号(11月5日)、お楽しみに。




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「自立成長型の人は、ブランド人である」  2003年10月22日 (第79号)

▼▼今週のテーマ▼▼

ブランドの意味

人にもブランドというものがある。
その重要性もわかったような気がする。

では、人のブランド、ブランド人の意味を、
もう少し掘り下げてみます。


▼反面教師君 vs 自立成長君

とある駅前スーパーの果物コーナー。
山積みされたままのミカンが腐りかけている。
安売りしているのに、客はその前を通り過ぎるだけ。

ところが、その横に「品切れ、完売」と表示された、
ミカンのコーナーがあった。

とある駅前居酒屋の合コン会場。
女性の誰にも相手にされず、ヤケになっている男がいる。
一生懸命しゃべり、女性に気を使っているのに。

ところが、その横に「携帯番号教えて」と幾人の女性にも
言い寄られている男がいた。


▼売れ残りミカンと品切れミカンの差

駅前スーパーにある安売りコーナー。
でも、いくら安売りしても、売れ残ってしまう商品があります。
なぜか?
そこには、「ブランド」が無いからです。

一方、同じスーパーでも、行列が出来ているコーナー。
倍以上の値段がするのに、品切れとなってしまいます。
なぜか?
そう、「ブランド」があるからです。

消費者は、「単にミカンという商品」を買い求めに行く場合、
まずは値段を最優先します。
だって、他のミカンとの差別性が無いのだから。
どれが美味しいのか甘いのか、わからないから。

売主のスーパーも、折り込み広告で「ミカン大安売り、一山200円」
など、単価中心のアピールをします。
ともかく、安さを強調する安売り攻勢で、差別化を図る。

一方、「愛媛県産のミカン」とか、「○○農家のミカン」など、
商品名を指定して買い求めに行く場合もあります。
その場合は、単なるミカンよりも値段が高くても買いますね。
だって、指定したミカンが食べたいから買いに行くのであって、
そこで多少値段が高くても、それは目を瞑ってしまうから。

売主のスーパーも、折り込み広告はしません。
クチコミが中心だし、広告しなくてもお客さんが集まる。
ともかく、商品名を指定されるよう、商品の差別化を図る。


▼安売りヒトと、品切れヒト

同じようなことが、人にも当てはまりますね。

合コンに参加した反面君。
一生懸命自分を売り込み、よくしゃべり、芸も達者。
携帯番号を教えてもらったら、マメな電話魔と化す。

でも、女性に「あのヒト誰だっけ」って識別されずに、
電話やメールの返信も無いまま、終わってしまう。

会議に出席した反面君。
懸命に自分の意見を述べ、自分の成果をアピール。

でも、上司や同席者から「あいつ、うるさいだけだな。」って言われ、
何ら、高位の仕事を任されたりはしない。

一方、自立君の合コン。
あまり売り込まなくても、
何故か帰り際には、女性から売込みがある。

会議の席、特段アピールしていないのに、
後日、もっと高位の仕事を任される。

ブランド商品とは、このような愛媛ミカン。
ブランド人とは、自立君のようなことを指すのです。


▼高級品だけがブランドではない

「高いミカンはブランド品」と勘違いされそうです。
「カッコいい男、頭のいい人がブランド人」と誤解を受けそうです。

でも、そうではありません。
一山200円のミカンでも、ブランド・ミカンにはなりえます。
顔も頭も二流の男性だって、ブランド人になりえます。

前号で申しましたね。
銀座三越で売っている30万円のオーダースーツも、
GAPで売っている1,000円のTシャツも、ブランド品。

500万円以上するベンツも、
70万円で買えるISUZUも、ブランド品。


▼ブランドの機能

ブランド品(ヒト)と、ノンブランド品(ヒト)。
その差を述べるには、ブランドの重要性について理解する必要があります。

企業や商品にとっても、そして人にとっても「ブランド」が重要なのは、
ブランドには以下3つの機能があるから。


▼識別機能

お客さんは、数ある候補の中から、自ら購入する商品を選択します。
ミカン1つとっても、複数の種類があるし、
ミカン以外、他の果物とも比較して、結局、どれかだけを購入。

その際、無意識のうちに「買ってみて損をした、後悔した。」
というリスクを避けようとします。

ミカンならまだしも、高価なものになればなるほど、その傾向は高まります。
車を買う際、「買ったけど、納得する価値は無かった。」
とは思いたくないですものね。

そして、その「後悔するリスク」を回避するため、
お客さんは、商品に関し、事前に様々な情報を入手するのです。
ところが情報の100%を入手することは不可能だし、
そもそも情報入手する時間が惜しいということもあります。

よって、ブランドを目印に商品を識別すれば、お客さんは、
その「後悔するリスク」の回避と、時間節約が出来ます。
これはブランドの「識別機能」というもの。

企業や商品にとって、ブランドの識別機能が、
自社商品を購入させる大きな手段となるのですね。
「松下のDVDであれば心配ない」
「GAPで売っているTシャツなら損は無いだろう」
と思わせることは、お客さんを誘導する最強の手段。

ブランド人である自立君。
「あの人は、信頼がおけるから心配無いよ。」
「彼なら、一緒に居ても損は無いよ。」
という「識別機能」が、周辺の人々にあるのですね。

ノンブランド人の反面君。
「よーく調べてみないと、彼のことわからない。」
「結構、一緒にいると危険かも。」
となり、識別されずに、置いてけぼりにされてしまうのですね。


▼固定化機能

ブランドを一度認識し、その価値を認めたお客さんは、
長期にわたりそのブランド商品を購入することになります。
これをブランド・ロイヤルティーと言う。

そうなると企業側は、固定客という安定した長期の利益が確保され、
短期的な値引きやプロモーションに依存することがなくなります。
つまり、安売りや、無理な売込みが不必要ってこと。

デフレの時代なのに、値上げこそすれ値下げしない
エルメスやヴィトン。

未だにJTBにも加入せず、
ましてやネットにも登場しない老舗旅館があります。
それは、長期の固定客だけで客室が一杯になるから。

自立君には、固定ファンがたくさんいる。
自分からアピールしなくても、彼の業績は誰もが認知している。
だから、どんどん高いレベルの仕事が舞い込んでくる。

合コンに参加しなくったって、女性に広まっている良い評判が、
彼のプライベートタイムを埋めてくれます。

反面君には、固定ファンがいません。
だから、「俺はスゴイ」「俺ってどうだ!」
って自慢し、言い回っていなくてはならない。

「自慢ばかりする人には、大した奴がいない。」
ってのも、このためです。
「忙しいことを、何となく誇らしげに言う人は、中身が薄い。」
ってのも、同じことですね。


▼意味付け

エルメスの高級バックが飛ぶように売れているのは、
お客さんが、「ブランド」から連想されるイメージが好ましく、
そのブランドを持つことにより、高い満足感を得ることが出来るからです。

例え同じ機能のバックでも倍以上の値段で売れるのもそのため。
お客さんは、機能だけで商品を購入するのではなく、
別の「意味=意義=満足感を得られるモノ」を求めているのです。

人の場合はどうでしょう?
同じ仕事を任され、同じ成果を出した反面君と自立君。
上司や取引先の満足感は異なるはず。
だから、反面君は感謝されず、自立君は感謝される。

デートしていても、自立君は満足感を与えられる。
ブランド人になると、同じことをやっても、
お客さん(相手、周辺の人々)の満足感が違うのですね。


▼イメージ

強い(高い)ブランドは、企業や商品のイメージを高めます。
企業イメージが高いということは、よりよい人材の採用にも、
取引先や金融機関との関係にもプラスに影響を及ぼす。
商品イメージが高いということは、より良いお店への出店にも、
仕入れ担当者や売り子との関係にもプラスに影響を及ぼす。

強い(高い)ブランドを持つ人の場合はどうでしょう。
その高いイメージを目指して、更に人が集まってきます。

上司や取引先に売り込むのも、自分から行くのではなく、
相手から来るに越したことありません。

女性(男性)に気に入られようとするのも同じ。
自分から行くよりも、相手から来てもらうほうが、
断然有利だし、事が上手く運びますね。


▼他事業へ

高いブランドを有していると、そのブランドを冠に、
他の事業への進出が容易となります。

例えば、家電メーカーであったSONYが、
VAIOというパソコンで成功した。
中身もすばらしかったのでしょうが、何と言っても
SONYという高いブランドが、成功へと導いたのです。

もし、ブランド力の無い家電メーカーであったなら、
パソコンという他事業への進出が、上手くいっただろうか?

人の場合も同じ。
経理マンとして絶大の信頼を得ていたブランド人の自立君。
親友と一緒に独立起業。
自立君のブランドが、「彼なら大丈夫だろう」と周りを安心させ、
多方面からの支援を受けることが出来た。

夫としてのブランドを築き上げた自立君は、
引越しの際も、家庭内の大きな変化・転換の際も、
妻や子供から「任せるよ。」と最後は言われる。

ブランドの無い反面君は、
独立しても「あいつがする新しいことで、成功するはずがない。」
って誰もが不安がり、支援してくれない。
夫の反面君は、家庭内の信頼ゼロで、いつも反対される。


▼そして、ブランド価値

ブランドの重要性。
最も重要なこと、それは「ブランド価値」です。

企業の場合、一般的に資産とは、不動産や預貯金などのこと。
つまり、目に見える、形としてある資産。

ところが最近、「目に見えない資産」の重要性が高まっています。
そして、その主なものが「ブランド」という資産。

不動産などの資産は、その中身は、建物や土地。
ブランド資産の中身は、上述した「識別機能」、「固定化機能」
などのこと。

自立した優良企業は、不動産などの目に見える資産よりも、
ブランドなど見えない資産の価値を高めようとしています。

人も同じですね。
カネ、家、車。
そんなものは企業の不動産と同じ。
それよりも、見えない資産である「ブランド」の価値を高めること。
自立成長君は、そこに最大の関心を持っています。


▼最後に

「コモディティー化」商品と言うのがあります。
コモディティー化とは、「差別性の無い」、「価格だけで勝負」のこと。

例えば、大豆やトウモロコシ。
もちろん、品種や新鮮さなどの差別性もあるが、
基本的には安いか高いかだけ。

コモディティー化された商品は、
「市場」とか「取引所」で売買されます。
そう、現物も見ないで、売買される。

コモディティー化された人、最近増えていませんか?
「別に、あいつじゃなくてもいいよ」
「でも、安いからな、彼は」

皆様も私も、コモディティー化されたと言われないよう、
お互いにかんばりましょうね。


▼マネジメントの方へ

企業価値を高める。
これがマネジメントの責務の1つ。

価値を高めるには、貸借対照表の資産額を
増やすしか無いですね。

でも、保有不動産も預貯金も、
それが増えるのは、基本的には他力本願。

自力で増やすことが出来る無形資産。
その核となるブランド。

マネジメントは、もっともっと、ブランドに
関心を寄せ、注力すべきですね。


▼▼次号のテーマ▼▼  10/15配信

>>ファッション

自立君、ブランド人は、
ファッションにも細心の気を払っています。

もちろん、ブランド品の服を買い揃える。
そんな安易な方法ではなく。

次号(10月29日)、ファッションについてお話します。

貴方は、キレイな包装紙でラッピングされたノンブランド君?
身の丈にあった包装紙でラッピングされたブランド君?




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「自分のブランド」  2003年10月15日 (第78号)


▼▼今週のテーマ▼▼ >>ブランド

自分という商品が何なのか? そのコアとは何か?
これらがわかった。

後は「自分という商品」のブランドを作り上げること。
さあ、自立成長型の人。
核心の1つ、「自分ブランド」について、お送りします。


▼反面教師君

ブランド大好きな反面教師君。
学生の頃から、ブランド品に身を包んでいた。
スノボやる時も、ゼミに行く時も、デート時も。
そして、多くの人の憧れの的となっていた。

社会人になっても同様。
ゼニアのオーダースーツ、ブルガリの時計。車も同然ベンツ。
それはそれは、合コンやクラブでモテたものだった。
もちろん、借金と親からの援助で買ったことは知られていないで。

そして今。
以前にも増して、ブランド品、高級品には拍車がかかっている。
でも、「なんか、ブランド品が歩いているみたい。」
「服は高そう、中身は低そう。」
「結婚だけはしたくない相手。」
って、陰口を言われている。

自分の価値観を明確に持っている反面教師君。
常に「俺はこうだ。」ってのが口癖。

20代の頃はそれで良かった。
「自分を持っていていいねー。」
「自信がある男性ってステキ。」

ただ、付き合った女性とは、半年と続かない。
会社の同僚からも、「いつかギャフンと言わせてやる。」
って思われていた。

そして今。
結婚生活はドロドロ。
妻や子供は、自分の言いなりにならないと不満らしい。
だから、家族はどんどん彼から離れていく。
部下とは、仕事以外の付き合いがゼロ。
取引先から、プライベートで誘われることも無い。
友人?
もちろん、仕事上で何らかのメリットを感じている人だけだ。


▼ブランド

「ブランド」と言う単語でまずは思い浮かぶのが、
エルメスやゼニアなどの高級ファッションブランド。
あるいは、リッツカールトンのような5つ星ホテル。
ひらまつのようなリッチなレストラン。
ベンツやボルボみたいなハイグレードカー。

これらは、言うまでもなくブランドですが、
ブランドとは、もう少し幅広い意味を持っています。

例えば電器のヨドバシやコジマ。
「あそこに行けば、安い家電が豊富に揃っている。」
そう思わせるお店も、ブランドを持っていることになります。

スタバは、注文したコーヒーが出てくるまで5分かかりますが、
5分待たせても満足する味と値段と店内雰囲気。
この「待たせても満足させる。」というのがスタバのブランド。

単なる温泉街だった九州の湯布院も、今やブランドを確立して、
他の温泉街との差別化に成功しました。

セレクトショップと言えばビームス。これもブランド。
theoryは、20〜30代キャリア服というブランドを短期に構築。 


▼人にもブランド

以上のようなお店やファッションなどのブランドと同様に、
人にもブランドというものがあります。

「○○さんって、博学で知的だよね。」
と、周りの人々が、その人の特徴を端的に直ぐに頭に浮かべられる。
この場合、○○さんは”ブランド人”だと言えます。

「パソコンのトラブルに付いては、XX君に聞こう。」
と、ある特定の事柄に関して、しょっちゅう名前が挙がる。
この場合、「パソコンのトラブル解消」が、XX君のブランド。

そして、自立成長型の人って、必ず自分ブランドを持っています。
あるいは、ブランド人ってのは、自立成長型のライフスタイルを
間違いなく実行しています。

では今週は、人のブランドに付いてですが、
もう少し詳しく、ブランドの意味や意義を解説してみますね。


▼ブランドとは

一般的に、商品などのブランドとは、
社名やコース名、ロゴだけを指すものではありません。
消費者である顧客に対して、特定の特徴やベネフィット(顧客
にとっての利益)、サービスを継続して提供するという、
売り手側(商品の提供者)の約束の印です。

あるいは、競合相手の商品(サービス)と区別させ、
より良い認識をさせるための名称、言葉、シンボル、デザイン
の組み合わせとも言えます。

これを人に当てはめると、顧客が周辺の人々となります。
そして、周辺の人々に与えている「何か」。
その特徴やベネフィット(周辺の人々にとっての利益)。
これを継続的に提供することが、人のブランド、
提供できる人が、ブランド人ということになります。


▼どんなことを与えるの

SONYというブランド。
社名ではありますが、同時に色んなことを皆さんは
思い浮かべるのでは。
その頭に浮かんだことが、SONYが顧客に提供する
特徴やベネフィットで、それがSONYのブランドです。

では人の場合は何か?
信頼、楽しさ、マメ、参考になる。
このような抽象的なことでもOK。

ギャグが面白い、会話が知的、色々教えてくれる。
こんな感じも有り。

パソコンのトラブル時には助けてくれる。
ステキなお店に連れて行ってくれる。
日本の歴史のことなら何でも知っている。
こういう、具体的な事柄もブランド。

いつもお洒落なファッションに身を包んでいる。
前向きな生き方をしている。
努力を惜しんでいない。
これは、直接のベネフィットを与えるものではありませんが、
間接的には何らかの影響を与えているので、やはりブランド。


▼ブランド人

社名や商品ブランドであるSONY。
上述したように、特徴や顧客ベネフィットを継続的に
提供することを約しています。

人のブランド、ブランド人も同様。
周辺の人々である顧客に、特徴やベネフィットを
継続的に提供することを約し、
またそのための努力を惜しみません。

自立君。
「自分が周辺の人々に与えることが出来る」事柄を、
しっかりと把握・自認しています。
そして、それを継続させることの大切さを知っています。

だから、「博学で知的だ」っていうのがブランドの自立君。
その維持向上に必死で、
電車で漫画なんか読んでいる暇はありません。

「あの人はお洒落」と言わせるのがブランドの自立君の場合。
他人より20分早く起きて、その日のスーツやタイ、シャツを選びます。
たった20分ですが、継続させるのは結構大変でしょうが。

「彼は、めったに病気で休んだりしない。」という自立君の場合。
健康維持のために、陰では、積み重ねの努力を継続しています。
毎晩、飲んだくれて、帰りにラーメンっていう誘惑に負けずに。

顧客に対し、「継続的」に自社商品の優位性、顧客のベネフィット
を提供する。
これを約束しているのがブランドです。
自立成長型の人は、それが出来ているから、ブランド人となりえるのです。


▼強いブランド

企業にとって、ブランドとは最も高い価値のある資産の1つです。
そう、不動産よりも現預金よりも、ブランドの方が価値のある資産。

だから、優良企業は、ブランドの価値の維持のみならず、
高めること、ブランドを強くすることを最重要課題としています。

結果、例えば同じ機能を有しているウォークマン市場で、
他社より2割以上価格が高いSONYが、常にトップシェアを保持している。
売上げ苦戦しているデパート業界で、伊勢丹の紳士服は一人勝ち。
湯布院には、閑散とした時期が無いようだ。

これら企業は商品が持っている「強いブランド」。
しかし、強いブランドを育てることは、一朝一夕に出来るものでは
ありません。
一貫したマーケティング活動や、高い品質サービスの提供、
環境保全への取組み姿勢、地域社会との共存など、
地道な努力の積み重ねが求められます。

また、強いブランドを持っている商品や企業は、
あれもこれもと求めず、ある焦点に絞って、商品やサービスを
提供しています。
高級品と、一般品。
地域限定と、全国版。
対象年代限定と、誰をも対象とする。
当然、両立は出来ませんからね。


▼強いブランド人

同じように、強いブランドを持っている人、自立君。
保有資産の中で、一番重要なものが「ブランド」であることを、
よく知っています。

また、その「ブランド価値」を高め、強くすることが、
ライフスタイルの中心を占めていることも共通しています。

そして、あれもこれもを求めずに、
自分の強みや特徴を更に強化することに焦点を合わせています。


▼高級品に囲まれた反面君

ブランド人のはずだった反面君が、40歳を過ぎて廃れていった。
これは、ブランドの重要性に気が付かず、
価値を高める努力を怠ったからです。

高級ファッションに身を包むことが、ブランド人と勘違い。
でも、高級ブランドという商品は、単なる「その人の包装紙」。
包装紙ばっかりに気を取られて、
売っている中身(商品)の価値を高めること、
あるいはその価値が何なのかを追求することをしていなかった。

もっと言えば、中身(商品)の価値に合わせて、
包装紙(身につけるブランド服や車)のグレードを高めていく。
この考えが必要。

高い服も車も、中身が伴っていないと、かえってみっともない、
不釣合いに見えてしまうってこと、気が付くべきでしたね。


▼一方的に価値を押し付けた反面君

同じように、「俺の生き方はこうだ。」と、
他人(顧客)を省みず、一方的にその価値を押し付けた反面君。
誰にも相手にされなくなったのは、致し方ありませんね。

自分の価値観を把握する。
自分の特徴や強みに集中する。
確かに、こう述べてきました。

ただ、そのいずれもが、周辺の人々(顧客)に受け入れられて、
初めて意味のあるものとなるのです。

製品に自信のある企業は、自社製品が売れて当り前だと考えがち。
でも、その自信は社内でのみ生きるのであって、
顧客に受けなくては、何ら意味がありませんね。
現に、そのような企業や商品、たーくさんあります。
そう言えば、上述したSONYにも、
ベータというビデオテープがありました。
品質も技術的にもVHSよりも優れていた。
これは事実なのですが、売れなくては意味がありませんね。


▼自立君は

一方の自立君。

ファッションには細心の気を払います。
しかし、時計もスーツも車も、自分の中身(レベル)にあったもの。
身の丈知らずとは言われない範囲で、最高のものを求めていきます。

100万円のローレックスも、30万円のゼニアのスーツも、ベンツも、
まだ早いと自認。
もちろん、いつしかそれらを身につけても十分なくらいに、
自分のレベルを高めようという、その意思は強く持っていますが。

価値観の押し付けもそうですね。
自分の価値観、アイデンティティーは、しっかりと持っています。
でも、相手に押し付けるような愚かな行為はしません。

また自立君は、長年かけて築き上げたブランドも、
一瞬にして崩壊することも、よくわかっています。
そう、雪印のように、企業でも多くの事例が出ているように。


▼最後に

ブランド。
なんと抽象的だが、意味の深い言葉でしょう。

ブランドには、高級も低級もありません。
エルメスもユニクロもブランドだし、
ベンツもISUZUもブランドですから。

但し、ブランド価値には、高い低いはあります。
是非、自立成長型の人として、
自分ブランドの価値を、高めていきたいですね。

自立成長型の人だから、自分というブランドを持っている。
自分というブランドを持っているから、自立成長型の人になった。
どっちでもいいですが。


▼マネジメントの方へ

企業ブランド。商品ブランド。
貴方の会社や組織には、ブランドがありますでしょうか?
あるとしたら、それを明確に一言で第三者に伝えられますか?

企業にも商品にも、そして部や課にも、
ブランドが必ずあります。
しかし、多くのマネジメントが、その価値を把握していない。
把握していても、明確に伝えることが出来ない。
伝えることが出来ても、価値を高める努力をしていない。

これが現実ではないでしょうか。


▼▼次号のテーマ▼▼  10/15配信

>>ブランドの意味

人にもブランドというものがある。
その重要性もわかったような気がする。

では、人のブランド、ブランド人の意味を
もう少し掘り下げてみます。

次週(10月22日)を読めば、
もうブランド人の達人になれますよ。




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「貴方という”商品”」  2003年10月8日(第77号)


▼▼今週のテーマ▼▼ >>貴方という商品

市場を細分化し、戦う場所も定めた。
そして、売込み。

でも、売込む前に、「自分という商品」、
これを理解しておく必要があります。


▼反面教師君

20代の頃の反面教師君は、
気軽さと素朴さが売り物だった。
狭いアパートには、1本2,000円のウィスキーと、
コンビニで買ったツマミしかなかったが、
いつも多くの友人が訪れたものだ。

そんな彼、30代に入り独立起業で成功。
港区・青山に購入した150平米の高層マンションには、
ワインセラーもあり、とてもGパンでは訪れにくい雰囲気を
かもし出している。
訪れてくる人々の中には、過去の友人たちは一人もいない。


▼会社勤めの貴方の、「自分という商品」

自分自身を「商品」と見なすことの重要性。
何度か述べた通りです。

会社勤めの場合、会社の利益を高める。
会社が目指す方向に何らかの貢献をする。

その対価としての報酬が、給料であり、業績評価ですね。
つまり、自分という商品を会社に提供した。
その見返りってこと。

反面教師君の中には、これを勘違いしている人がいます。
「こんなに働いているのだから、もっと給料をもらって当り前だ。」
とかの不満タラタラ。

「こんなに働いている」こと自体に、
会社は給料を払うのではありませんよね。
あくまで、その商品の中身に払うもの。

鮮度の落ちた魚ばっかを売っている魚屋が
「一生懸命セールスしているのに、誰も買ってくれない。」
って嘆いても、皆さんも買い物はしないでしょう。

「どうやったら評価されるのか、わからない。」
とかの不明瞭グダグダ。

これではまるで、商品開発を諦めたブランド・メーカーと同じ。
顧客のニーズを掴む、それに応じる努力を怠り、
単に「わからない」で逃げているだけですよね。


▼恋人と時を過す貴方の、「自分という商品」

恋人が、限られた自分の時間を、貴方と一緒に過ごす。
これは、「貴方という商品」から、何かを受け取ることが
出来るから、貴重な時間を費やしてくれているのです。
つまり、彼女(彼)の時間という対価を貴方は得ている。

もちろん「貴方という商品」は、目に見える貢献だけではなく、
もっと精神的なこと、見えないことが多いことは、
言うまでもありませんが。

「あいつ最近、デートに応じないな。ふざけやがって。」
と怒っている反面教師君。
ふざけているのは、反面君の方ですね。

彼女は、限られた貴重な時間をデートに振り当てる。
そして、その価値が無いと思ったから、デートに応じない。
基本的には、こう考えたほうがいいでしょう。

彼女(彼)のことを怒っている場合ではなく、
まずは「自分の商品価値」が下がっていることを自省することが
先決です。

「あいつといても、つまらないから、嫌だ。」
と嘆いている反面教師君。
つまらないのは、反面君の方です。

恋人同士、充実した時間を過す。
そんなの当り前。
それが出来ない、半分以上の責任は、
自分にある、自分という商品にあると思うべきでしょう。


▼もっとひどい人の、「自分という商品」

もっとひどいのが、彼女をゲットするのに失敗した反面教師君。

合コンが終わって、何も収穫の無かった反面教師君。
「今日の女、皆わかっちゃいないよなー」だって。
わかっていないのは、反面君なのに。

ナンパで声かけた女の子から無視されたら、
「なんだよ、ブスのくせして」だって。
最悪のブスおとこですよね、そんな反面君は。

結婚生活も同じ。
妻(夫)は、まさに「夫(妻)という商品」に、
生活の一部、若しくは人生の過半を預けている。

だから、その商品価値を維持向上させるのが、夫(妻)の責務であるはず。
にも関わらず、その責務を放棄するばかりか、
カミサン(ダンナ)の悪口を平気で口外。

話になりませんね。


▼商品価値

いずれの例も、「自分という商品」に何らかの価値があり、
それに対し、会社であれば「給料」、恋人であれば「時間」、
妻(夫)であれば「生活・人生」という
貴重な「財産」を与えてもらっているのです。

だから、「自分という商品」の中身を把握し(自己認識)、
「自分という商品」の価値の向上に努め(自己向上)、
それを相手に伝えていく(コミュニケーション)。
それが、必要とされる基本動作です。


▼商品構成の円

では、「商品」をどのように把握すればいいのでしょうか?
それは、商品がどんな構成になっているかを、まずは理解することです。

お手間かけて恐縮ですが、紙とペンを用意して下さい。

大・中・小、三つの円を、
中心点を1つにして、描いて下さい。
そう、矢(ダーツ)の的のように描けましたね。

そして、一番内側の小さい円の中に
「商品のコア」と太字で書き、細字で「ベネフィット」と書いて下さい。

次に、ニ番目の円の中に、
「商品の形態」と太字で書き、細字で「ブランド」、「品質」、
「デザイン」と書いて下さい。

最後に、外側の一番大きな円の中に、
「商品の付随機能」と太字で書き、細字で「信用」、「アフターケア」
と書いて下さい。

出来ましたでしょうか?


▼商品構成の説明

以上の各々についての説明を、
自動車という「商品」を例にとって説明します。

「商品のコア」とは、顧客がその商品を購入する際の
中心的なベネフィット(顧客にとっての利益)。
顧客の本質的なニーズを満たす機能のことです。

自動車の場合、人を乗せて運ぶという運搬機能が、
ベネフィットであり、商品のコアとなります。

商品のコアを囲んでいるのが、「商品の形態」。
ブランド、品質、デザインなどのことです。

自動車の場合、いうまでもなくTOYOTAとかSUZUKIなどがブランド。
燃費や安全性というのが品質。
色やスタイルというのがデザイン。

そして商品のコアや形態に付随する「商品の付随機能」というものが
あります。
これは商品自体に付随しているわけではないが、
顧客にとって価値が認められる機能のこと。

自動車であれば納車、アフターサービスや保証などが該当します。


▼「自分商品」の構成

これを「自分という商品」に当てはめてみましょう。

自動車で言う「商品のコア」が、運搬することなら、
貴方という「自分商品」のコアは、何でしょうか?

貴方の周辺の人々(同僚、恋人、友人、家族etc)が、
貴方から得られる中心的なベネフィット(利益)のこと。

もちろん、目に見えるもの、見えないもの。
経済的なこと、精神的なこと。
何でもOK。

自立成長君は、几帳面でマジメな会計士。
会社に対して提供している商品のコアは「正確な会計処理」。
恋人に対しては「誠実な恋愛関係」。

次に、貴方という「自分商品」の形態は、何でしょうか?
商品のコアを包んでいる「貴方」のブランド、品質、デザインのこと。

上述の自立君。
ブランドは、何と言っても几帳面でマジメさ。
顧客(周辺の人々)が受ける自立君のイメージそのもの。

だから品質は、徹底的にマジメで几帳面を追求していく。
デザインも、マジメっぽさを表現するファッションや髪形。

そして、貴方という「自分商品」の付属機能は、何でしょうか?
商品には直接くっついていないけど、周辺の人々が認める価値。

自立君は、几帳面さゆえ、会社に対しては、会計処理という
コアの商品以外に、
部内のITシステムを手伝ったり、
部内の住所録を毎期更新したりしている。


▼一貫性

また、自分商品の構成は、
コアも形態も付随機能も、一貫性があることが必要です。

高級品の提供というコアを商品としている百貨店が、
その包装紙(形態)をみすぼらしくしないのは当然。

気軽に買えるカジュアル感が売り物のチェーン店が、
入り口を入りやすくする(付随機能)ことも当然。

冒頭の反面教師君。
気軽さ、素朴さというコアと、
それを包むはずの形態や付随機能が、
かけ離れてしまったのですね。


▼どこが重要か?

もう1つ述べることは、
商品を構成するこれら3要素の中で、
貴方にとって、どれが最も重要かということを、
見極めておく必要があります。

例えば、立ち食いそば屋でアルバイトをしている人。
商品のコアは、「店頭で売り子をする」こと。
この場合、自分のファッション(形態)や、会話力(付随機能)よりも、
徹底的に「効率的に仕事をこなす」というコアが最重要。

一方、最高級フレンチ・レストランの店員。
商品のコアの1つは、そば屋同様、「売り子」。
ただこの場合、ファッション(形態)や会話力(付随機能)が、
コア以上に重要となってきます。

これを、貴方自身に当てはめてみて下さい。
3つの要素であるコアや形態、付随機能が何なのか?
それと同時に、どの要素が一番重要なのかって。


▼最後に

立ち食いそば屋とフレンチ・レストラン。
チェーンの安売り店と高級百貨店。

どっちが偉いとか、どっちが優れているってこと。
一概には言えませんね。

人間だって同じ。
立ち食いそば屋型の人がいたっていいし、
フレンチ・レストラン型の人がいたっていい。

要は、どっちなのかを明確にすることと、
明確にしたら、それに一貫性を持たせることです。

ゼニアのスーツにエトロのネクタイ姿で、
立ち食いそば屋の店頭に立ったり、
GパンTシャツ姿で、高級百貨店の店員をする。
そんな人には、ならないで下さいね。


▼マネジメントの方へ

商品とは、とかく、消費財とかサービスなど、
顧客(消費者)に対してのことばかりだと思われがちです。

しかし、マネジメントしている貴方の部署。
その商品とは、利害関係者に提供している全てが対象。

営業部なら、顧客への「製品」という商品はもちろんのこと、
社内の商品開発部、製造部、流通部、財務部、経理部。
全てが利害関係者(=顧客)

だから、財務部に対して提出している「売上げ実績」も
貴方の部署の「商品」。
製造部に対して提出している「受注予測」も「商品」。

ここら辺のことを、忘れないようにして下さい。


▼▼次号のテーマ▼▼  10/15配信

>>ブランド

自分という商品が何なのか?
そのコアとは何か?
これらがわかった。

後は「自分という商品」のブランドを作り上げること。
さあ、自立成長型の人。
核心の1つ、「自分ブランド」について、
次週10月15日、お送りします。



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「自分という商品の売り込み先」 2003年10月1日 (第76号)


▼▼今週のご挨拶▼▼

久しぶりに四国に行ってきました。
いつ行っても、自然も人柄も料理もGood。
どこかの大都会とは比較にもなりません。

高知・四万十川では、野原で小学生の男の子と女の子が、
ワンちゃんのように走り回っていました。
TVゲームに耽っている都会の子供たちと比べて、
どっちが人間っぽいでしょうかね。

愛媛・道後温泉では、20代の若手社員が、
イキイキと目を輝かせて、観光案内をしていました。
なんとなく会社に入ってしまい、
関心事と言えば、通勤時の漫画本と夜の合コンだけ。
そんな都会の若手社員の何十倍も幸せですね。

地方分権、地域回帰、Iターン、Uターン。
流行の言葉から、当り前の言葉になって久しいですが、
この現象、もっともっと進んだらいいなと思うのは、
私だけではないでしょう。



▼▼今週のテーマ▼▼ >>標的を定める

自分分析と周辺分析を行った。
「弱み」を「強み」に転換することもした。

では、その結果、自分はどこに向かって、
どうやって売り込むのか?
どんな人々や環境を相手にするのがいいのか?


▼反面教師君

ファッションに自信のある反面教師君。
クラシコ・イタリア系から、ハデハデ・モード系まで、
幅広く取り揃えている。
ところが、誰からも「お洒落だね」って褒められたことが無い。

知合いが多いことでも自信がある反面教師君。
アドレス帳は、整理しきれないほど一杯だ。
ところが、彼の名前を登録している人が少ない。
この事実を彼は知らないらしい。

部内の会議に出席した反面教師君。
「これは理論的に反対だ」という皆の意見に同調し、
彼も、反対理由を理論的に述べた。
ところが別の場所で、「直感的にこれはOKだ」という会議があり、
彼はそれにも同調。
1年後、単なる伝書鳩以外の役割が彼には与えられなくなってしまった。

野球チーム。
ピッチャー、キャッチャー、内野手、外野手。
なんでもこなせるオールラウンド・プレーヤー。
でも、1つだけダメなものがあった。
それは、いつまで経っても、レギュラーになれないことだ。


▼マーケティングの具体化

貴方が活かせる機会(市場の機会)と、それに対する脅威(市場の脅威)、
及び貴方の強みと弱みの分析により、
どのような土俵で戦えば勝てるのか、
ある程度定めることが出来るようになりました。

では次に行うことは、勝てる土俵(市場)とその技(ポジション)を
具体的に見つけ出す作業です。

第一段階は市場の細分化(セグメンテーション)。
不特定多数の貴方の知合いや周辺の人々(=顧客)を
そのニーズや行動スタイルの違いによって小集団に分けることです。

第二段階は標的市場の選定(ターゲティング)。
分けられた市場セグメントを評価し、貴方が参入すべき市場セグメントを
選定することです。
つまり、第一段階で細分化した市場の中で、
貴方が勝てそうな、自分を活かせそうなものを選ぶのです。

第三段階はポジショニング。
第二段階で標的にしたターゲット内で、
他人に対し、貴方という「商品」が、競争上有利な立場になるよう
位置付けることです。

では、以下その詳細に付いて解説します。


▼市場細分化(セグメンテーション)

周辺の人々(=顧客)全体に対し、貴方という「商品」を提供し、
万人から認められれば、言うことはありません。

でも、「貴方一人で顧客全員を満足させる」ことは不可能でしょう。
時間も能力も一人分しかない貴方が、
多種多様な人々に好かれる、認められるなんて、無理ですよね。

一方、人々(顧客)のニーズが多様化、高度化し、
ちょっとやそっとのことで、顧客は満足してくれません。
また、ネットやコンビニ等、便利になった現在では、
貴方の代替役は、いくらでもいます。

そこで、顧客に入り込み、貴方という存在理由を認めさせ、
貴方という商品を「ブランド」化させなくてはなりません。

貴方というブランドを認めさせるには、
顧客一人一人のニーズにマッチさせなくてはならない。
でも、貴方の時間や能力には限界があります。

そこで、不特定多数の顧客を、
同じ性質やニーズを持つセグメント(固まり)に分け、
あるセグメントに照準を定めて、
自分人生という限られた資源(時間・労力・カネ・能力等)を投下する。

この考え方が必要となるのです。

銀座の高級百貨店という顧客の層と、駅前安売り店の顧客層では、
そのニーズが大きく異なり、企業もそのニーズに合わせていきます。
銀座高級百貨店に行く顧客を満足させるには、
品質の高い品揃えや、店に入っただけでラグジュリーな雰囲気を
感じさせる必要があるし、
駅前安売り店に行く顧客は、そんなラグジュリー感よりも、
安くて手際よく商品を提供してもらうことを望みます。

論理的な説明を好む上司と、体力勝負のスーパー営業マンを好む上司。
業績評価は、短期収益が主の企業と、長期的視点が主の企業。
派手好きな女性と、地味好みの女性。
その時楽しければ派の友人と、相互向上を求める友人。

セグメントは、その所属している場所によって、
いろいろとありますね。


▼標的市場の選定(ターゲティング)

このように細分化された市場に対し、
貴方はどの市場で戦っていくかを選定していくことが必要となり、
そのことを標的市場の選定と言います。

ターゲットを選定していくには以下のことを考慮し、
総合的に判断することが求められます。

貴方の強み;貴方の強みや特徴。

市場規模;ターゲットにしようとしているセグメント(人々の集団)の規模。
「世界であの人にだけ認められればいい」なんていう人もいるでしょうが、
この際それは例外とし、「あまりにも母集団が小さいセグメント」だと、
こじんまりした人生になってしまいます。

ライフサイクル;貴方が人々に提供する具体的な事。
このライフサイクルを検討する必要があります。
「これから注目される」ことなのか、「もう衰退期で流行遅れ」なのか。
折角がんばって手に入れた「資質や能力」も、誰も認めないようでは、
意味がありませんので。

参入障壁;ターゲットとした市場が魅力的であれば、他人も間違い無く
参入するでしょう。
よって、貴方が先行者となってその顧客層に売込み、認められている際、
ライバルたちがどれだけ入ってきやすいかを考える必要があります。

次に、標的市場を定める際、「標的としない市場」を捨てる。
これも頭に入れておいて下さい。

万人に受けるのが不可能なことは前述した通りです。
貴方が、ネットとかコンビニに代替されないためには、
標的としない市場や顧客を諦め、捨てること。
そして、標的市場に集中すること。
これが必要となってきます。


▼ポジショニング

ターゲットとする市場を選定したら、次にその標的市場の中で、
貴方という「商品」をユニークなものとして位置付けてもらい、
そのイメージを作り出す活動が必要となり、
それをポジショニングと言います。

要は、「貴方」をその顧客層の中で、明確に位置づけさせること。
あるいは、ある特定の分野や事柄に接した際には、貴方のことが
頭に浮かぶようにさせること。

派手好き女性という顧客層。
「クラブのことなら、アイツに聞こう」
これもポジショニングです。

論理的思考の会社幹部達。
「彼なら、この現象を論理的に推測してくれるだろう」
これもポジショニング。

つまり、「○○のことなら、あいつだ」となることです。
そうなれば、もう「貴方という商品」は、
出来上がったことになるでしょう。


▼最後に

万人に気に入られることは不可能ですが、
一人だけに気に入られればいい、ってのも、ちょっと寂しいですね。

では、どのあたりまで絞り込めがいいのでしょうか?
結局それが、その人の人間性であり、人としての器。

ともかく1つ言えることは、
魅力的な商品は、広告しなくても消費者から近寄ってくる。
そして、商品の魅力(特徴)が、ある特定のことに絞られていればいるほど、
魅力的な商品と見なされる可能性が高い。

人間も同じではないでしょうか。


▼マネジメントの方へ

経営されている会社の魅力とは?
提供している商品の売り込みポイントとは?

これを一言で言えないようなら、
マネジメント(経営者)としては失格だと思います。

また、「我が社の商品は、低価格で高品質、高級感の中にも親しみ
やすさがあり、万人に受け入れられています。」
こんな商品は、買わないほうがいいですね。


▼▼次号のテーマ▼▼  10/8配信

>>貴方という商品

市場を細分化し、戦う場所も定めた。
そして、売込み。

でも、売込む前に、「貴方という商品」
これを理解しておく必要があります。

次回10月8日は、
貴方という商品を分解してみます。



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「マーケティングの進め方」 2003年9月24日 (第75号)


▼▼今週のご挨拶▼▼

秋の観光シーズン、いよいよスタートですね。
首都圏の人、近場では熱海や箱根が有名。

両地区を比較すると、何となく、箱根はいつも大勢の観光客がいるのに、
熱海はやや閑散とし、寂しさが漂っているような気がします。

箱根も熱海も、東京から近いというアクセスの優位性、
箱根は湖や山、熱海は目の前が海という自然の優位性、
そして、温泉のメッカ。
どちらも、「資質=もって生まれたもの」としては、優劣付け難いのに、
何で差が出ているのでしょうか?

箱根には、非常に整っていて、満足度の高い美術館(彫刻の森、
ガラスの森)があり、行列を作っている美味しいレストランも多い。

一方、熱海は「どっか行く場所あったっけ?」って感じ。
要は、アクセスや自然以外に、「行きたくなる理由」があるか無いか。
その差が出ていると思います。
(もちろん、そうでは無いという人もいるでしょうが)

これって人間も同じ。
「もう一回会いたくなる理由」
「ついつい連絡取りたくなる理由」

さて、貴方には(私自身にも)、どんな理由がありますでしょうか?
資質が良くても、理由が無ければ、人は集まりません。


▼▼今週のテーマ▼▼ >>マーケティングの進め方

顧客(周辺の人々)志向であることはわかった。
売込みと、マーケティングの違いも理解した。

でも、どうやってマーケティングをすればいいのか?


▼反面教師君

今や資格の時代。
経理部に配属された反面教師君は、
「ならば簿記を取ろう」と挑戦し、見事合格。
ところがその後、会社には「会計ソフト」が導入され、
経理マンは大幅削減。

明日は待ちに待ったデート。
張り切って、セレクトショップで最新のファッションを購入。
ところがデート時、彼女曰く
「貴方らしくないわ、その服」。

合コンに向けて、新しいギャグや芸を仕入れた。
面白みが無いってよく言われているが、これで大丈夫だろう。
同席する友人は口下手なので、俺の勝ちだな。
ところが当日、ギャグや芸は元々苦手なので、全て空回り。
横では、口下手だが、得意分野に関し知的に話している友人の周りを、
女の子が囲んでいた。


▼商品とマーケティング

ベンツとカローラは、消費者の層(セグメント)が異なります。
だから、ベンツはカローラ消費者を相手にはしていないし、
カローラは、ベンツ消費者(ベンツ・セグメント)には売り込みをしない。

同様に、オートクチュールの服とユニクロ。
紀伊国屋と駅前スーパー。
売れている商品ほど、消費者のセグメント(層)を絞っています。
セグメント(層)を絞ることをターゲティング(標的を定める)と言うのですが。

また、定めた標的(ターゲティング先)に、闇雲に商品を売り込んだりもしません。
逆に、消費者からこちらに来させるようにします。
来させるために何か特徴づけることを、ポジショニングと言うのですが。

このような考え方が、マーケティングの基本。

同じようなことを、貴方自身に当てはめてみる。
これが、"自立成長型の人”になるためのマーケティングです。

多様なタイプの上司の要望を全てこなすなんて無理。
どの女性からも好かれるなんて不可能。
自分を売り込むよりも、相手に来させる。

万人に受けることを望み、売り込みばっかする。
結果、せっかくのベンツなのに、カローラ並みの価格(価値)に
成り下がってしまう。

この辺のことを、クドイようですが解説していきます。


▼マーケティングの流れ

はじめに、マーケティングの進め方。
それは、次のようなフローとなります。

Step1 環境分析
外部環境分析(貴方に関係する周辺の分析)
内部環境分析(貴方自身に関する分析)
を行う。

Step2 市場機会の発見
市場機会(貴方の長所・強みが活かせる場所)
これを発見する。

Step3 市場の細分化(セグメンテーション)
市場機会がある場所を、そこにいる人々のタイプ別に細分化する。

Step4 標的市場の選定(ターゲティング)
細分化した中で、どのタイプを貴方の標的にするか、定める。

Step5 ポジショニング
標的とした対象の中で、貴方の特徴を出すことを考える。

Step6 マーケティングミックス
次の4つのPにて、マーケティングを実施。
Product(商品=貴方の特徴/機能/強み)
Price(価格=貴方の価値)
Place(場所=貴方を売るルート)
Promotion(プロモーション=貴方の売込み)


▼整理すると

整理すると、こういうことです。
まず、貴方が置かれている生活や仕事の市場環境を識別するために、
貴社の外で起こっている市場環境(外部環境)分析を行う。
同時に、他人と比較して貴方の強さ(内部環境)分析を行う。

分析結果に基づいて、貴方の人生目標や生活の主軸が設定され、
マーケティング戦略の構築段階へと進みます。

マーケティングの構築段階とは、市場(戦う場所)を的確に捉え、
周辺の人々(=顧客)ニーズに基づき、
いくつかの市場に分けるという市場細分化をまずは行う。
つまり貴方の周辺にいる人々は、どういう分類がされているか、
どういう固まりに分けられるかを把握することです。

次に、細分化された市場の中で、貴社が生きていくべく市場
(顧客の固まり)を選択するという標的市場の選択を行う。

そして、標的市場の中で、貴方の優位性が保てるようなポジション
(標的市場内での貴方の位置付け)を設定します。

設定したポジションを顧客(=周辺の人々)に確実に届けるため、
貴方の売りとなるポイント=商品やサービス(Product)、
貴方の価値=価格(Price)、売込み方法(Promotion)、
売り込む場所(Place)を立案し実行していくこととなるのです。

以上の流れを、1つずつ、もう少し詳しく述べてみます。


▼市場機会と市場の脅威の発見

市場機会とは、「他人には無い強みを発揮出来る舞台」のことであり、
要は「ここの場所なら勝てる」土俵のことを指します。

強みを発揮出来ない場所で戦うことは、
あたかもホームランバッターが、2番で送りバントばかり
するようなもの。

スタバは、美味しいコーヒーを気軽に安く提供出来るという強みがある。
その強みは、多少待たされてもいいし、セルフサービスを厭わない人々
が集まる場所でこそ、発揮出来る。
だから、5つ星ホテルには出店しないし、缶コーヒ市場にも進出しない。

一方、市場の脅威とは「仕事やプライベートにおいての貴方の生活に、
何かしら悪影響を及ぼすであろう外部要因」のこと。

市場の機会を見つけ出すことと同時に、脅威を把握することも重要です。
なぜなら、脅威に関し事前に対策を練ることが出来るから。

強みを発揮出来る場所が、経理的知識を使えるビジネスシーンだとする。
その場合の脅威は、会計ソフトの登場。
ならば、単なる簿記だけではなく(=会計ソフトで代替されるという脅威)
コンサルティング型の経理マンを目指していく。


▼環境分析

このように市場機会や脅威を発見するためには、
貴方の外部と貴方自身を分析する必要があります。

貴方の外部分析とは、家族、地域、仕事環境、トレンド、人気の資格、
転職市場、女性(男性)の嗜好、趣味の世界、同僚やライバル、
など、貴方自身ではコントロール出来ないが、貴方の生活に何らかの影響を
及ぼすものの分析です。

市場はどうなっているのか、人々(顧客)のニーズがどこに向かっているのか、
ライバルはどのような作戦を遂行しているのかーーー。

内部分析とは、貴方の強みや弱みを明らかにすることです。
性格・性質、知識、能力、財産、友人関係、資格、面白み、人間性、
居住地、勤務先、過去の経験・体験、趣味−−−。

これら持ち合わせている資源をどう活かすか、
その強みと弱みの分析を行っていくことです。

「飛ぶボールやドライバー」が進化しているゴルフでは、
飛ばすという能力よりも、正確に打つという技能が、より重視されてきている。
この「市場動向」を把握することが、外部環境分析。

自分の性格は、イケイケ・スタイルよりも着実型。
だから、ボールを飛ばした距離よりも、正確さを求める方が合っている。
これが内部分析。

以上より、他人は「何ヤード飛ばした」って自慢し合っているが、
自分は、「正確にボールを目的地まで打つ」こと、これで戦う。
こんな感じです。


▼弱みを強みに

ここで、貴方の内部分析で見つかった貴方の「弱み」。
これを「強み」に変え、市場の機会を見つけ出すことも、心がけて下さい。

例えば、シャイな性格で、どうしても他人と話すことが不得意。
なんとなく弱み(短所)のように聞こえます。

ところが発想を変えると、シャイ=他人の目を意識し易い、
あるいは細かいことに気が付いてしまう。
これって、シンクタンクやコンサルティングという仕事に向いていますね。
周辺の動向に敏感だっていう資質があるので。

最新のデートスポットは知らないし、ファッションセンスも無い。
女性を喜ばせる術を知らないという「弱み」。
これも、考え方次第では、「弱み」ではなく「強み」となります。

だって、女性の全てが最新スポットで、シャレた服を着て、面白おかしく
過せる男性を待っているわけではありません。
逆に、そのような男性は「遊びなれている」って警戒する女性も多いでしょう。

「デートスポットは、別に図書館でもいい」
「ファッションは私が揃えてあげる」
「面白おかしいギャグよりも、知的な会話の方が好き」
こんな女性、実際には多く存在しています。

ちなみに最近、古いビルを再生して、違う価値を生み出すビジネスが
流行っています。
町外れに、築30年の古いビル。
ビルとしては、「短所」だらけ。

これを逆手に取り、
町外れ=安い、及び周辺が静か
古い=レトロ感
ということで、「安い賃料で、静かに仕事が出来る、レトロ感のあるビル」
ってことで、多少修繕し、売り出すのです。

都心のど真ん中になるピカピカのビルと対抗しても仕方が無い話。
弱みを強みに転換させ、新たな価値を創造している例ですね。


▼最後に

会社に入り、一方的に配属先を決められた。
適正テストはやったけど、そんなもんで本当の資質(強み)
がわかるはずない。
だから、今の所属部署が「自分の強みを発揮出来る舞台」で無い。
そんな可能性は、多くの人にあることでしょう。

女性(男性)とお付き合いしたいけど、なかなか相手が見つからない。
いいなーって思う人がいても、付き合うまでには至らない。
付き合うまでに至っても、直ぐに別れを告げられてしまう。
これも、強みを発揮出来る舞台に立っていないからなのでしょう。

人間、誰にでも必ず、その舞台はあるはずです。
やみくもに舞台に立たずに、まずは発揮出来る舞台を探すこと。
これが先決ですね。


▼マネジメントの方へ

自社の内部環境分析。
自社が属している市場等の外部環境分析。
その結果判明した、市場機会と脅威。

これを明確に、的確に行っている企業って、
思ったより少ないのが現実です。

「分析よりも、まずは売り歩け」
こんな経営スタイルは、ゴミ箱に捨てて下さいね。


▼▼次号のテーマ▼▼  10/1配信

>>標的を定める

自分分析と周辺分析を行った。
「弱み」を「強み」に転換することもした。

では、その結果、自分はどこに向かって、
どうやって売り込むのか?
どんな人々や環境を相手にするのがいいのか?

次週(10月1日)は、
対象となる人々や環境の細分化(セグメンテーション)
標的を定める(ターゲティング)
その中で、自分の特徴を出す(ポジショニング)
そして、実行(マーケティング・ミックス)
をお送りします。





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「自立成長型の人は、無理して自分を売り込まない」  2003年9月17日 (第74号)

▼▼今週のご挨拶▼▼

一時低迷していたベンチャー企業の上場が、また増えてきたようですね。
最近の傾向は、「何をやっている企業か」がわかりやすいこと。
言い換えれば、非常にニッチな、あるいは特定された分野のみを、
主業務としていること。

「不動産が主業務です。」ではなく、
「マンションのモデルルームを作っています。」とか、
「環境ビジネスです。」ではなく、
「風力発電をやっています。」とか。

これって、ヒトにも当てはまるような気がします。
「彼は何が得意なのか?」
これが、より明確、わかりやすい方が、受ける時代。

「何でも出来る」は、「何も出来ない」ってことかな。



▼▼今週のテーマ▼▼ >>マーケティングの基礎

「要は、他人に売り込めばいいのでしょ。」
とばかりに、自己PRばっかの人。

これはマーケティングではありません。
単なる販売行為と同じ。

今回は、"自立成長型の人”になるための、マーケティングの基礎を、
お送りします。


▼反面教師君

反面教師君、会社で1つのプロジェクトが成功。
周辺には、
「すごいだろ。俺がやったんだぜ。」
って言いまわっている。
でも、実際には彼の貢献は少なく、
単に同じチームにいただけだってこと、皆、知っている。

反面教師君は、漸く、好きな女性とのデートにたどり着いた。
彼女には、
「トレンド・スポットを案内してあげる」つもり。
でも彼女は、そんな場所よりも、
普通の街で、普通のお茶デートが望みらしい。

いかに予定が埋まっているか。
どれだけ、保存した携帯電話番号の数が多いか。
それが自慢の反面教師君。
でも予定の多くは、不必要なこと。
保存した番号に電話しても、折り返しが来ない。


▼マーケティングの定義

マーケティングの定義とは、
「顧客の目的やニーズを満たすための、アイデアや商品・サービスの概念
を作り上げ、その価格設定と、プロモーション、及び流通経路を企画し、
そして実行していく過程」

わかりやすい文章で述べると、
「消費者やお客さんが望んでいるような商品(サービス)を考え、価格を
定める。そして、その宣伝広告や売る場所などを考えて、実行すること。」
前号で述べたことですね。

また、”自立成長型の仕事人”は、自分を「1つの商品」として見なし、
家族・仕事仲間・知合いなどの周辺の人々が、「自分という商品」の消費者だ。
こういう認識があります。

「自分の価値を高めることに鋭意努力している。」
高めるために、「自分は、他人から見てどれだけの価値があるのか」に敏感。
その結果、自分を商品に、周辺の人々を消費者として見なすことが出来るのです
ね。

で、ここにマーケティング理論(手法)が必要となってくるのです。
上述したマーケティングの定義は、ヒトに当てはめるとこうなります。

「周辺の人々が自分に期待していることは何か?」
「自分は、周辺の人々に何を提供できるのか?」
「周辺の人々の期待と、自分が提供出来ること、そこに”自分の価値”がある」
「そして、その価値を周辺の人々にアピールし、認識してもらう。」
「また、その価値が一番発揮出来る仕事やプライベートの場所を考える。
以上を実行する過程・手法・考え方が、”自立成長型の人”のマーケティングで
す。

仕事場でもプライベートの場でも、大競争の時代。
顧客(=消費者=自分の周辺の人々)のニーズ多様化。

これは、売り手(自分自身)本位の脱却と、顧客本位の導入を余儀無い
ことと心得、より一層マーケティングへの重要性に着目していると言えます。

尚、勘違いしないで下さい。
決して、自分を捨てろって言っているのではありません。
他人に合わせることを勧めているのでもありません。


▼マーケティング志向

マーケティングには、主に以下4種の志向があります。

生産志向;
周辺の人々は、気軽に安易に、「貴方を利用」出来れば満足と考えている。
だから、貴方は、効率的な生活を心がけ、
多くの人々との接点を増やすことに重点を置くという志向。

この志向は、バブル期のように皆が動き回っている時代。
あるいは、ともかく人脈を増やすことが最重要である時期には有効。
但し、貴方からのアウトプットは少なく、現在のような「真の価値」を望んで
いる人が多い状況では、効率的な生活をしているはずの貴方は、
空きタイムばかりが増えてしまうことでしょう。

製品志向;
周辺の人々は、貴方の外見、資格、キャリア、資産などに興味を示すと
考えている。だから、貴方はたくさんのお金をこれらに使い、
「見える魅力」を増やすことに重点を置くという志向。

この志向は、周辺の人々のレベルが低い場合に有効。
なぜなら、本質を見ようとしないで、表面的なことに関心が高い人々を
相手にしているから。
但し、外見・資格・キャリア・資産などいずれもが、無駄な投資となる可能性
が高く、時代に取り残されてしまうリスクが生じます。

販売志向;
貴方が、多くのアピール/PRを、周辺の人々にしない限りは、
人々は貴方を活用してくれない、認めてくれない、付き合ってくれない
という考え方。

この場合、貴方は周辺の人々が望むような価値を提供するのではなく、
一方的な売込みのみとなる。

だから、貴方が思っている以上に周辺の人々は、貴方の価値を認めずに、
どんどんその距離が広がっていくリスクが生じます。

マーケティング志向;
標的とする人々の層を定め、
そのニーズに見合った価値を提供し
人々の満足度を高めることに主眼を置き、
競合者と競争していく、という姿勢。
これがマーケティング志向です。

ともかく事務処理を早くやって欲しいというクライアントと、
面白い発想・アイデアを出して欲しいというクライアント。
貴方1人が、これら2人の異なったニーズを満たすのは、難しいはず。

クラブ大好きで、ともかく派手で先端的な遊びを欲している女性と、
図書館大好きで、知識・教養を分かち合うことを望んでいる女性。
貴方1人が、双方から結婚を申し込まれるのは、まず考えにくいはず。

ある程度ターゲットとする市場(人の特徴)を絞り込み、
そこにいる人々の満足度を高めることに集中する。

人々の満足度が高まると、2度目の「貴方への接触」が期待出来るのみならず、
良い評判がクチコミで友人に伝播することにより
更なる「貴方のファン」を生むというサイクルが期待出来るのです。


▼マーケティング業務

マーケティングの活動範囲は、売込みやPRなどに限定されるのでは
ありません。
周辺の人々のニーズをくみ上げ、彼ら彼女らにとって「価値あること」に対して、
貴方が提供する一連のプロセスを計画・実行し、コントロールしていくことです。

繰り返しですが、アピール・売込み・PRと、マーケティングを混同している場合
が多く見られます。

前者は、売り込む手段を考える活動で、「周辺の人々」の数の確保や、
短期的なメリットが目的となります。

PCに送られてくるEmailの数。
保存している異性の携帯電話番号の人数。
どれだけ予定が埋まっているかの埋まり具合。
長期的なことは考えずに、今日明日の給料の額。

それが行き過ぎると、
貴方との接触が1回限りで終わってしまう人々ばっか
となってしまいます。

一方、マーケティングの目的は、
人々との継続的な関係と、それによる貴方の価値の増大。

そのために、周辺の人々が何を求めているのか、
それを満たすには何を提供すればいいのか
という風に、周辺の人々中心の考え方が求められます。

そして一度接点が出来た人々には、
何度も貴方に足を運んでもらう努力が欠かせません。


▼生活(人生)におけるマーケティングの位置付け

以上のマーケティング志向や手法。
これは、貴方の生活の中心的存在となることが望まれます。

貴方は、仕事、趣味、知合い、得意技、生活、能力、外見、
これらの集合体。

その集合体の中心に、顧客である周辺の人々がいる。
少なくとも無人島で過している以外は。

となると、マーケティング活動は、貴方の「自分人生」の
中核的な役割を果たしてく必要があります。
つまり、マーケティングは、周辺の人々の求めるものを明確化し、
それを満足させるための、必要な役割を担っているのです。


▼最後に

魅力ある人には、自然に人が集まってきますね。
私の知合いにも、何人か該当する人がいます。

で、その人たちに必ず共通するのが、
「周辺への気配り・配慮」がすごいことと、
「自分の魅力」を知っていること。

これって結局、マーケティング志向ってことですよね。
魅力的な人の中には、
豪快で、他人の目なんか気にしていない人もいるようです。
でも実際には、「なんとかして周辺の人々を満足させよう。」
って努力している場合が多いですよ。


▼マネジメントの方へ

マーケティング志向ってのは、
今や企業経営の常識ですね。

ところが、言葉でわかっても、実行している企業って、
思ったより少ないのが現実です。
何故か?

顧客になりきっていないからです。
あくまで「売り手」の域を脱しようとしていないからです。

顧客のニーズを集めるだけでは不足。
企業自身、マネージャー自身が、顧客になりきること。
これが肝心ですね。

まさに人の成長と、企業の成長、その根本は同じ。


▼▼次号のテーマ▼▼  9/24配信

>>マーケティングの進め方

顧客(周辺の人々)志向であることはわかった。
売込みと、マーケティングの違いも理解した。

でも、どうやってマーケティングをすればいいのか?
それを次号(9月24日)にお送りします。



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「自分という商品のマーケティング」 2003年9月10日 (第73号)


▼▼今週のご挨拶▼▼

ソニー/出井CEOの著書「ONとOFF」を漸く読んでみました。

世界のソニーを経営する出井氏は、ワイン通、ゴルフ狂でも有名。
超多忙の中、趣味の時間をどうやって割いているのか。
それが知りたかったのが、読む目的でした。

で、結論は、ON(仕事時間)とOFF(プライベート時間)を上手に
シンクロさせているってこと。
仕事(ON)は、何となく趣味(OFF)に繋がっている。
プライベート(OFF)でやることを、何らか仕事(ON)に関連させている。
つまり、あえて明確に切り分けていないのではないでしょうか。

ONはOFFの一部。OFFもONの一部。
もちろん、仕事とプライベートの公私混同を避けた上での。

是非、真似てみたいものですね。

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▼▼今週のテーマ▼▼  >>マーケティング

消費者のニーズを集めること。
ニーズを商品化し、消費者に販売すること。
これらの行為を「マーケティング」と言います。
マーケティングこそ、企業活動の命。

で、同じことが「自立成長型」の人にも言えるのです。
上述の「商品」を貴方自身に置き換えてみて下さい。
え? 人にもマーケティング?


▼反面教師君

出世した反面教師君は、「俺が一番」だと思い込んでいる。
だから、他人の話をあまり聞かない。
増してや、部下や妻の話には耳すら貸さない。
彼が、世間からドンドン離れていっていることは、言うまでも無いが。

出世しない反面教師君は、「俺は出来ない奴」だと決め込んでいる。
だから、人の言いなりばっか。
部長の指示、友人の助言は、そのまま丸受け、鵜呑み。
彼が、自分の魅力をドンドン失っていることは、間違いの無い事実だ。

誰からも良く見られたいと思っているのが、風見鶏型の反面教師君。
攻撃型の上司とは、仕事も攻撃的。
慎重型の同僚とは、仕事も慎重。
派手好きの女性とのデートでは、ド派手な服装。
地味な女性とは、デートの場所も地味。
で、結局は、誰からも信頼されず、彼女も出来ないでいる。


▼人にもマーケティング

いきなりビジネスっぽくて恐縮ですが、マーケティングとは
「顧客の目的やニーズを満たすための、アイデアや商品・サービスの概念を
作り上げ、その価格設定と、プロモーション、及び流通経路を企画し、
そして実行していく過程」と定義されます。

この文章をもう少し簡単に述べると、
「消費者やお客さんが望んでいるような商品(サービス)を考え、価格を
定める。そして、その宣伝広告や売る場所などを考えて、実行する」こと。

ところで、文章中の言葉を、次のように置き換えてみて下さい。
「顧客」を「貴方の周辺の人々」
「価格」を「貴方の価値」
「商品やサービス」を「貴方自身」
「宣伝広告」を「アピール/PR」
「流通経路や売る場所」を「貴方の活動場所」

「貴方の周辺の人々が望んでいる”貴方自身”を考え、貴方の価値を定める。
そして、そのアピールの仕方や、貴方の活動場所を考え、実行する。」

「貴方の周辺の人々」とは、仕事や会社関係、家族、友人・恋人などのこと。
「貴方の価値」は、金銭的報酬のみならず、第三者が貴方に提供してくれる
全てのこと。
例えば時間を共有してくれる、精神的なつながりを持ってくれる、協力して
くれる、恋人になってくれるなど。
「貴方の活動場所」とは、会社、学校、趣味の場などのこと。

いずれにせよ、企業活動においてのマーケティングと同様、
ヒトについても、マーケティングというのがあるのです。

尚、誤解無いように、次のことを事前に申し上げておきます。
まず、企業における「商品」を「貴方自身」に置き換えていますが、
これは決して、人間が商品のように売買されるという意味ではありません。
ただ、消費者は商品を自由に選ぶように、周りの人々も「貴方自身」を選
んでいるということです。

次に、「周辺の人々が望んでいる”貴方自身”を考える」について。
これは決して、周辺の人々の言いなりになるとか、迎合する、
あるいは自分を失ってまでも、周りに合わせるという事ではありません。


▼では本題の前に

「自立成長型の仕事人」シリーズ
以上のことを前提に、これから数回に分けて「自立成長型の仕事人」に
なるための「マーケティング」について、解説していきます。

が、本題に入る前に、今号では「マーケティング」という意味の理解度を
高めていただくために、いくつかのことを取り上げます。


▼桶屋

風が吹けば桶屋が儲かるという諺。
風が吹いたからと言って日本中全ての桶屋が儲かるわけではありません。

風がどこからどのようにどんな強さで吹いてくるのか、
その予測を見誤った桶屋は、強風なのに小型の桶を作ったり、
その逆であったりと、売れない桶を作ってしまい、
在庫ばかりが貯まってしまいます。

予測は間違いなかったが売れるタイミングに乗り遅れた桶屋は、
風が過ぎ去ってから桶を店頭に並べたために、
店は閑散としていたことでしょう。

そして予測すらしなかった桶屋は、店を閉めてどっかに遊びに行っていた
かもしれません。

では、風が吹いたことにより儲けた桶屋とはどこか?
それは、今後どのような風が吹くのか、
その風にはどんな桶が最適だろうか、
そして吹いた時にはどういう心構えが必要だろうか、
などを考え、実行した桶屋です。

的確な予測。
最適な商品開発。
準備万端の販売体制。
これがマーケティングです。

ヒトも同じ。
仕事やプライベート、恋愛関係などで、今後どのような「風」が吹くのか。
その「風」には、どのような「自分」であるべきだろうか。
そして、「風」が吹いた際には、自分はどのような行動を取るべきだろうか。


▼七草セット

七草の季節になると「七草セット」というのがスーパーの店頭を飾ります。
これはマーケティングの成果により新しい商機を掴んだ好事例の1つ。

そもそも七草は単なる野草であり、それ自体に大きな価値があるとは言えま
せん。セリもスズナもそれ単体で買う方が量もあるし、今時いつでも手に入る。

では、なぜ単なる野草を、少量なのにそこそこの値段で売れるのでしょうか?
それは、この七草のセットという商品は、草というモノを売っているのではなく、
「七草かゆという昔からの風俗を気軽に手に入れるツールの提供」を売って
いるのです。

言い換えれば、売っている商品は「七草という野菜」ではなく、
「七草、という季節感を味わえるための手助け」。

モノだけを売ろうと思えば、そこに新しい商機を見出すのも難しいし、
見出したとしてもモノの価格でしか売れません。
七草も、単にセリとして売り出しているコーナーでは、
同じ値段で10倍もの量を買えることでしょう。

商品とはモノだけでは無い。
顧客が欲している付加価値を見つけ、それを商品化する。
そして、単一のモノとしての価格よりも高く設定して、提供する。
顧客の満足は、モノ以外から得てもらう。
これがマーケティングです。

ヒトも同じ。
貴方自身の学歴、職歴、外観・容姿、預貯金、資格、知識、人間性ーーー。
これらを単一で「売っていく」のではなく、
「顧客である周辺の人々」にとっての付加価値を見つけ出し、
それらをセットにして提供していく。


▼安売り専門店

安売り専門店が活況です。
100円ショップ、家電専門店、ドラッグストア。

一方、元々安さが売り物であったスーパーマーケットの中には、
業態が悪化し、倒産企業も出ています。
で、その差は何か?

それは、そこがどんな店なのかがきちんと消費者に伝わっており、
消費者の頭にも、十分にインプットされていることです。

100円ショップは、「いろんな種類の小物が何でも100円」ということが明確。
カメラの安売り店は「カメラ・パソコン・家電・時計などが多数、しかも
安い値段で揃っている」と消費者は認識している。

一方スーパーは、いろんなモノを安く売っているが、何が得意技なのか
不明確だし、第一欲しいモノは専門店の方が値段も安く種類も多い。
つまり、曖昧な姿なのです。

同じことは商店街にも言えます。
多くの商店街が、大型店の出現で苦しんでいる。
でもその中でも、常時お客さんで一杯の商店街があります。
そこでは、「あそこの商店街は○○○だ」ということが、明確に消費者
に伝わっているのです。

自社の特徴は何か。
それは、どの層の顧客に適しているのか。
その層の顧客に対し、自社の差別性を明確に打ち出すにはどうすべきか。
これらを行っていくのがマーケティング。

ヒトも同じ。
自分の特徴、魅力は何か。
それは、仕事の場で、プライベートの場で、どのような人々に受けるのか。
その人々に対し、自分の差別性を出すにはどうすべきか。


▼“価格”破壊と”価値“破壊

業績を伸ばしてきたマクドナルド神話も、昨年からややおかしくなって
きました。
安さだけでは、売れなくなってきたのですね。

価格破壊という言葉をよく耳にします。
従来の価格から大幅に下げ、それでも顧客の満足度は下がらない。
これが基本。

但し、価格という金銭的なもののみならず、「価値」まで破壊してしまった
例が、散見されます。
価格を下げることばかりに目が行き、サービス内容や新鮮さ、
面白みなどの「価値」まで破壊させてしまうのですね。

一方、100円駐車場というのは、どこでも見られるようになりました。
これは、従来1時間単位で500円もしていた駐車場業界では、
全く新しい発想として10分100円ということを仕掛けたもの。
大成功を収めたベンチャーも何社かおります。

値下げ競争に巻き込まれ、原価割れでも販売してしまうことを避ける。
本来の価値を失ってしまうことの危険性を知っている。
だから、顧客にとっての「商品の価値」がどこなのかを、
徹底的に追究していく。
これがマーケティング。

ヒトも同じ。
気に入られようと、何でも安請負する。
いつもいつもイエスマン。
これでは、価値破壊をしている価格破壊と同じ。


▼そしてマーケティング

成功している企業は、消費者相手のサービス業だろうが、企業相手の
物販だろうが、同じ経営姿勢を有しています。
それは、「顧客に最大の関心を払う」ことに焦点を当て、
「顧客を満足させる」ことが、何よりも大切だと認識していること。

そして、それらを達成させるための手段がマーケティングであり、
その過程のほんの1つが、販売・営業活動なのです。
そう、マーケティング=販売・営業活動ではありません。

もう少し専門的に述べると、成功している企業は、
標的とする市場を明確にし、
顧客のニーズを理解した上で、
顧客を満足させることに専念し、
更に顧客が大きな満足を得られるように会社全体を引っ張っています。

このように成功企業は、「顧客満足を中心」として事業活動を行っており、
その中心となる手段(道具)がマーケティングなのです。

繰り返しですが、「貴方」という商品。
あるいは、「貴方」という会社。
これを、「周辺の人々」という顧客中心に、一度見つめ直してみては
どうでしょうか?

決して、周辺の人々に迎合するわけではありません。
あくまで、「貴方の価値」という価格を高めるための行為です。

そして、企業が「標的とする市場」を明確化するのと同様、
貴方という商品も、標的市場の明確化が必要です。
多くの女性にモテたい。
あの上司からも、この上司からも認められたい。
ともかくたくさん資格を取りたい。
こんな、万人に受けることを望んではダメ。

貴方商品、貴方会社の経営者なら、
マーケティング理論を押さえていきましょう。
次週から、個別の解説をしていきます。


▼最後に

人間は欲張りなものです。
欲には、上限が無いのでしょうか。

でも、限られた時間と能力。
どこに割くのが効果的なのか。
何よりも重要ですね。
それを解く鍵が、マーケティングってことでしょうか。


▼マネジメントの方へ

企業経営で最も重要なことは何か?
この問いかけに、経営戦略構築、明確なビジョン・目標の設定、
人材開発、ファイナンスーーー。
いろんなお答えがあると思います。

私は、これらよりも、まずはマーケティングだと考えています。
マーケティングの基本動作さえ忠実に行っていけば、
結果的に経営戦略も構築出来るし、ビジョンや目標も明確化します。
ヒトもカネも、マーケティング次第でどうにでもなります。


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▼▼次号のテーマ▼▼  9/17配信

>>マーケティングとセリング

「要は、他人に売り込めばいいのでしょ」
とばかりに、自己PRばっかの人。

これはマーケティングではありません。
単なる販売行為と同じ。

次週(9月17日)は、自立成長型の人として押さえておくべき、
マーケティングの基礎について、お送りします。



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「他人の協力を得るには」 2003年9月3日 (第72号)


▼▼今週のご挨拶▼▼

早くも秋風が心地良い季節になりました。
黄金色の稲穂でいっぱいの田舎道ドライブ。
いいですね。

稲穂で思い出すのが
「実るほど、頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」という言葉。
これ、お気に入り。

そう、実力が付き、人間として極上になった人ほど、
謙虚な姿勢を取る、という意味。


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▼▼今週のテーマ▼▼  >>そして、協力を得るには

人の心理もわかった。
自分人生のリーダーシップの重要性もわかった。

それでもやはり、周りの人は協力してくれない。
どうしたらいいのでしょうか?


▼反面教師君

夫の反面教師君は、絶対に家事をやらない。
「洗濯も炊事も、妻の仕事だから」。
だから、妻がいくら忙しくしていても、
週末はゴロ寝ザンマイ。

上司の反面教師君は、コピー取りを「下っ端のやる仕事」
だと決め付けている。
だから、優秀な若手が、どんどん辞めていっている。

買い物をする時、「金を払っているんだから当然」
という態度で、店員には言いたい放題。
口のきき方とても横柄。
だから、結局は、いいサービスを受けてないようだ。

そんな彼は、しょっちゅう他人と言い合いをしている。
反面君「なんでやってないんだよ、あれを」
某さん「だって、聞いてないもん」
反面君「やれって、言ったぞ」
某さん「そんなの知らない」


▼”人ヒトひと”の仕上げ

自分人生の経営者、自立成長型の仕事人となるには、
他人というヒトを上手に使っていくことが必要。
このことについて、3回に渡って解説してきました。

実行力(有言実行)。
指示や協力内容の明確化。
協力依頼先への裁量権(エンパワーメント)。
人の心理の基本原則把握(マズロー5段階説など)。
人財と人材と人在と人罪の区別。
ーーー

以上のことを押さえた上で、他人の協力、他人との協調を
得ていくのですが、まだまだこれだけでは不足です。


▼モチベーション

上司、同僚、友人、家族、恋人。
誰かから何かを依頼された。指示された。

それを受ける(やる)には、何らかの理由が必ず存在します。
この「やってあげる理由」を、依頼事項に対する動機(モチベーション)
と言います。
そこでまずは、モチベーションに付いての理解度を高めていきましょう。

モチベーションの代表例として、「金銭的動機」、「社会的動機」、
「自己実現的動機」というのがあります。
金銭的動機とは「生活に必要な金銭を得たい」という生きる上での根本的
なもの。

社会的動機とは「価値観を共有出来る組織・友人関係・家族関係の中で生活
をし、そこで注目や評価を受けたい」という欲求。

自己実現的動機とは「自分を成長させたい、社会的使命感を満たしたい」
という一段高いレベルの欲求。


▼効果的

反面教師君のように、相手のことを考えずに一方的な人。
まず間違いなく、自立成長型の仕事人にはなれないことでしょう。
自分人生の経営も、先が思いやられます。

なぜか?
言うまでもありませんね。

反面教師君から依頼を受けた人は、彼の依頼事項を「いやいや」
やってあげている。
あるいは「金の切れ目が縁の切れ目」だと思って、ドライに応対している。
場合によっては、「いつか復讐してやる」って姿勢。

これでは、まともに依頼事項をやってくれるはずがありません。
やってくれても、長続きはしません。

反面教師君に足りないのは、依頼先の「モチベーション」を高めようという
姿勢が全く無いことです。

依頼先のモチベーションはどこにあるのか?
それを高めるにはどうしたらいいのか?
これらを考慮してからの依頼(指示)と、考慮無しの依頼(指示)
では、結果に大きな差が出てきます。

更には「やり甲斐のある依頼内容・雰囲気・関係」を作りあげることが
重要です。
そのために、依頼した理由を説明し、依頼先からの共感を得ること。
依頼内容のマンネリ化による、やり甲斐の低下を防ぐこと。
依頼事項達成の際には、貴方と依頼先の共通の成功・成果とすること。
なども必要でしょう。

要は依頼先に「張り切ってもらう」こと。


▼インセンティブ

個々人のモチベーションを高めるもの、高めるための何かを
「インセンティブ」と言い、上述した3種のモチベーションに関連して
それぞれのインセンティブがあります。

金銭的動機に対しては、金銭的報償がインセンティブとなる。
これが不足すると他のインセンティブを与えても不満は解消されないケースが
多く、一方では、あるレベルを超えるとモチベーションを高める効果が薄れる
傾向がある。

例えば、「○○円あげるから、これやっといて」。
○○円が余りにも少ないと、「やってあげる意欲」が薄れる一方、
一定額以上となると、それ以上の額の引き上げよりも、
依頼内容のやり甲斐などが重視されることとなります。

社会的動機に対しては、ある依頼事項に対し評価をするとか、
その結果地位や権限を高める、名誉ある何かを与えるなどの
社会的評価がインセンティブとなる。

あるいは魅力あるリーダーや気心知れた仲間の存在という帰属意識を高める
ことも、インセンティブの1つです。

依頼先に対しての貴方からの評価や誉め言葉が、
金銭的インセンティブよりも効果的となること、多々あるはずです。

自己実現的動機に対しては、自分の理想像に近づくための機会や環境を与えて
いくという自己実現の場の提供がインセンティブとなる。

つまり、依頼先に対し「貴方の依頼(指示)をやっていくことが、
自己の成長・向上に繋がり、将来の自分像に近づいていくことが実感出来る」
という状態にさせることが自己実現の場の提供となります。

妻(夫)に対し、単なる生活共同者でも無く、主従関係でも無い。
貴方の依頼事項、注意、指示内容を聞くことが、妻(夫)の自己成長に
繋がっている。
そんな実感を持たせることが重要となります。


▼補完関係

他人に何かを依頼する際、貴方と依頼先との「補完関係」を構築する
ことも、人を上手に使うには必要となってきます。

依頼主の貴方が上司であろうと夫であろうと、
それは決して「偉い」わけではありません。
単に部下や妻と役割が違うだけ。

だから、依頼先の部下や妻に「偉いという立場」で依頼や指示をするのでは
なく、「自分の不足していることを補ってもらう」という姿勢が重要です。

また、「妻だから、洗濯をやるべき」、「部下だから、コピーをやらせても
いい」なんていう発想もダメ。
相互補完の観点から、「どちらがやった方が効果的か、効率的か」を考え、
結果的にそれが妻や部下なら、そう依頼するというようにすべきです。

場合によっては、夫が洗濯をしたり、上司がコピーを取ったりする方が、
効果的な相互補完になることも、ありえます。

野球チームは、4番バッターも9番バッターもそれぞれに求められている機能
があります。
どちらが偉いわけでもなく、相互に補完し合う。
そういうチームが強い。

個々人の関係でも同じですね。


▼コミュニケーション

他人に何かを依頼したり、関係を構築する際、
モチベーションやインセンティブという「手法」ばかりが先行してもダメです。

一番大切なのは、何と言っても「コミュニケーション」。
そう、依頼先や関係先との「意思疎通」ですね。

コミュニケーションは、IT化と個人化が進んだ現在だからこそ、
その重要性が高まってきています。

メッセージの送り手である貴方と、受け手である依頼先。
このコミュニケーションがうまくいかないと、トラブルの発生、
業務の滞りなどに結びついていく。
一方、円滑なコミュニケーションは、迅速な意思決定や問題解決に繋がり、
結果として、貴方も依頼先も効果が高まっていることになります。


▼コミュニケーションの「コツ」

効果的なコミュニケーションを行うには、次のことを意識しておきましょう。
それは、自分がどういった人物であるかをさらけ出すという自己開示、
自分の考えを表に出すという自己表現、
同時に相手の話をよく聞く傾聴、
そして明確な表現。

コミュニケーションの手段がEmailだろうと会話であろうと、
あくまでそこにはコミュニケートしたいと考えている相手が存在します。
その相手に「自分がオープンになり、明確に表現し、且つ相手の話を十分に
聞いてあげる」、という姿勢が無いと、決して相手は心を開かないこと
でしょう。


▼コミュニケーションの落とし穴

コミュニケーションが上手くいかない場合(人)には、主に以下の問題が考え
られます。

送り手の問題:
情報の受け手に好意的に見てもらおうと、送り手が情報を操作することが
コミュニケーションの阻害要因となることがあります。
恋人に気に入られたいばかりに、明確な依頼や注意が言えないなどがその一例。

受け手の問題:
情報の受け手が、複数の情報から、自分の好みで特定の情報を選択する場合、
受け手に関するコミュニケーションの阻害要因となります。
例えば複数の部下からの情報の内、一緒に飲み歩いている部下からの情報を
選択してしまうなどがありえます。

双方の問題:
送り手と受け手の間で、年齢、性別、地位などが異なると、
同じ文章でも違った解釈をしてしまう、文化的差異というのもコミュニケーション
の阻害要因となります。

いずれにせよ、コミュニケーションとは、「相互に意思疎通が出来た」
場合のみを指すのです。
つまり、「言っただけ、言いっ放し」はコミュニケーションとは言いません。


▼コンフリクト

人の心理とかモチベーションを理解し、コミュニケーションも抜群。
それでも、人同士には、相反する意見や態度、ライバル意識などの対立や、
軋轢(あつれき)が存在する。
これをコンフリクトと呼びます。

一般的に、コンフリクトはそのマイナス面ばかり強調されますが、
やり方次第では、プラスと働くことも覚えていて下さい。

コンフリクトがプラス面に働くとは、
お互いが競い合うことで意欲が高まる、
相互の意見交換の過程で相手への理解が深まる、
意見の対立を経て当初のアイデアを発展させる、
新たな視点で問題発見に繋げるなどが挙げられます。

夫婦喧嘩も、上司との言い合いも、友人とのライバル関係も。
どうせ必ずある「コンフリクト」を、プラスに働かせる。
これが、上手に「自立成長」していく際のコツですね。


▼最後に

威張ったって、何の得にもなりませんよね。
せいぜい「威張り散らした」という、低次元の欲求を得られるだけ。

それよりも、家族、友人、恋人、部下、お店の人、赤の他人。
皆、「喜んで、承ります」
そう思わせる方が、100倍もお得だし、
第一、お互いに気持ちいいはず。

自立成長型の人ほど、他人への気配りが出来ています。
「実るほど、頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」ですね。


▼マネジメントの方へ

成功している企業の経営者。
色々なタイプがいますが、1つだけ共通していることがあります。
それは、周りの人々からの信望を集め、部下の人望が厚いこと。

信望を集め、人望を厚くする。
そのやり方は人それぞれ。
これだっていうテキストは存在しません。
全て、マネジメントである貴方の「器量」で決まります。


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▼▼次号のテーマ▼▼  9/10配信

>>マーケティング

消費者のニーズを集めること。
ニーズを商品化し、消費者に販売すること。
これらの行為を「マーケティング」と言います。
マーケティングこそ、企業活動の命。

で、同じことが「自立成長型」の人にも言えるのです。
上述の「商品」を貴方自身に、
消費者を「意中の人」とか「周辺の人」に置き換えてみて下さい。

え? 人間にもマーケティング?
それを次週(9月10日)からお送りします。




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「リーダーシップ」  2003年8月27日 (第71号)


▼▼今週のご挨拶▼▼

ブームになって久しい沖縄に、鉄道が開業しました。
正確に言うと、モノレールですが。

そこでは、東京等の大都会では失われた「公共の場での優しさ」
を見ることが出来ます。

初めて乗っただろうお婆ちゃんが、降りるべき駅で降りられなかった。
すると周りの人々が、これは一大事だと、次の駅まで手を取って
降りるまでサポート。

子連れの母子が乗ってくると、競って席を譲っていた女子高生達。
自動改札の使い方がわからなくて困っている人がいたら、
まるで高級ブランドでも買う客に対しての丁寧さで、駅員が応対していた。

健康と長寿が自慢の沖縄。
こんな優しさが日常に残っているからこそだと思います。



▼▼今週のテーマ▼▼  >>リーダーシップ

自分の人生を経営するのであれば、
自分人生のリーダーシップを取る必要があります。

だって、貴方以外には、誰も取ってくれないのですから。
まさか、上司や母親や先輩に取ってもらうわけもいかないし。

では、リーダーシップを取るにはどうすればいいのか?


▼反面教師君

部下に作成の指示をしたプレゼン資料。
客先に見せたら、不評を買ってしまった。
「なにやってんだお前は。ちゃんとやれよ」
上司の反面教師君は、いつもこんな感じ。

旅行の予約を妻に頼んだ。
しかし一箇所、ホテルの予約が欠けていた。
「ホント、あいつは愚図で抜けている」
夫の反面教師君は、いつもこうだ。

バブル期、潤沢な交際費を使って、度々飲み会を開いていた。
しかし今は自腹。
「どうも最近、飲み会の誘いに乗ってくれる奴がいないな」
反面教師君は、最近悩んでいる。


▼人生のリーダーシップ

自立成長型の仕事人、自分人生の経営者に共通することは、
「自分の人生は、自分が引っ張っていく」という意志を貫いていること。
また、自分人生を引っ張るには、他人の協力が必要なこと、
良好な人間関係・人脈構築が必須であることも、知っています。

他人の協力を得て、自分人生を引っ張っていく。
それには、「貴方という経営者」が、第三者である他人に対し、
「自分人生」の”リーダーシップ”を取ることが重要。

但し、誤解の無いように。
友人や仕事関係の中で、リーダー格になる必要がある、ってことを
述べているのではありません。

人それぞれ、中心的存在になることが得意な人と、そうでない人がいますし、
中心的存在になることが、全て良し、というわけでもありませんので。

ここで述べたいことは、「仲間の中で中心人物になるべきだ」
ということではなく、
貴方自身が「自分人生」のリーダーシップを取るべき。
これだけです。

上司、両親、彼女彼氏、親友、著名な人。
もちろん彼らの助言は大切にすべきです。
もちろん彼らの利害関係も忘れてはいけません。

でも、決めるのは貴方。
そして、貴方の人生への協力者を得るには、
貴方がそのリーダーシップを取る必要がある、ということです。


▼リーダーシップを取るには?

リーダーシップは、正確に言うと、
ぐいぐい引っ張る力(本来の意味のリーダーシップ)と、
管理していく力(一般的にはマネジメントと言う)に分かれます。

前者で必要なことは、”物事を前に前に進めさせる”機能。
自分(貴方)のビジョンを提示し、貴方人生の協力者である第三者への
動機付けを行うこと。

後者で必要なことは、”効率的に進めさせる”機能。
お金や時間の管理をしたり、問題の解決をしたりすること。

自分人生の経営者は、この双方の能力を理解した上で
持ち合わせることが求められます。


▼リーダーシップの行動原則

具体的にどのような行動を取ることがリーダーシップとして求められるかは、
依頼先となる第三者(他人)の置かれた状況(レベル)によって
変わってきます。

まず、第三者のレベルが極めて低い場合。
この状況においては、様々なことに関してリーダーである貴方自らが、
次から次へと決定を下し、第三者に指示を出していくことが求められます。

第三者のレベルはまだまだ低いが、それなりに成長してきた段階に行くと、
リーダーである貴方は、第三者との対話を増やし、
やってもらいたい事に関する説明を十分行った上で、
貴方が決定事項を決めていくことになります。

次の段階に入ると、第三者のレベルは更に高まり、
貴方と第三者が一緒になって様々な決定をしていくといった
参加型となっていきます。

そして最終段階まで第三者のレベルが高まると、第三者だけでの意思決定が
多く下され、その決定にも第三者が責任を取るようになります。


▼依頼した貴方の責任

「協力を依頼する第三者のレベル」
何かを依頼する際、第三者のレベルに合わせて行動パターンを変える。
なぜそんなことが重要なのでしょうか?

それは、依頼したことによる結果は、全て貴方に影響を及ぼすから。
そして、その結果の責任は、結局は貴方が負担せざるを得ないからです。

「あいつに頼んだのに、ちゃんとやってくれない」
って愚痴っても、何の意味もありません。

愚痴っているだけでは、自分人生の経営は出来ませんし、
自分人生のリーダーとしては失格です。

だからこそ、「誰に頼むか」以上に、「どのように頼むか」、
「頼んだあとどうするか」が、重要となってくるのです。


▼相手のせいにしない

会社の経営者は、「業績に対する責務」を負担するのが仕事。
と言っても過言ではありません。

ならば、自分人生の経営者である貴方も「結果」に対し、
責務を負っているのは当然。

妻や恋人、友人や部下に何かを依頼しが、思い通りにやってくれない。
そんな時に、「何やってんだよ」って愚痴るだけならまだマシ。

ところが、依頼先に対し怒ったり叱ったりって場合が多いのではないだろうか。
怒ったり叱ったりってのは、最も簡単だし単純な行動。

その場では、依頼先のヒトは従う、うなずく、誤るかもしれません。
でも、長続きはしないことでしょう。
結果が芳しくない場合、依頼先の責任ではなく、貴方の責任。
これくらいの強い考え方を持つことを、お薦めします。


▼エンパワーメント

話は変わって、エンパワーメントという概念を解説します。

貴方が妻や恋人からスーパーで買い物を頼まれたとします。
その際、手取り足取り「あれを買え、これを買え」って指示されるケースと、
「全て任せるから」って自由放任されたケース。
どちらが貴方はいいですか?

これは人それぞれですが、もし貴方が、買い物という「業務」を完璧にこなし、
更に上達していくには、上述のどちらも不適切。

最も望ましいのは、依頼した妻や恋人が、貴方に対し
「業務(買い物)の達成のために、どうやったらいいのかを、
貴方が自立的に考え行動するように、側面的にサポートし、その力を与える」
ようにすることです。
そしてこのことを「エンパワーメント」と言います。

つまり、手取り足取りでもなければ、任せっきりの自由放任でもありません。
買い物の例を出しましたが、貴方が第三者に依頼する場合に当てはめてみて
下さい。

「あれやっといて」
「これ頼む」
だけではダメ。

かと言って「ああやってこうやって、こうしろ」
って全て指示するのもダメ。
エンパワーメントというやり方で、妻や恋人、友人や部下などの第三者に
依頼する。
これが、人生の経営者には必要な考え方です。
 

▼影響力

人生のリーダーとして、第三者に何かを依頼し、やってもらう。
そのための考え方として、最後に「影響力」というのを解説します。

依頼される側は、貴方の何らかの「パワー/ちから」に応じるから、
あるいは何らかの理由があるから、依頼事項を「やってあげる」のです。

その「パワー/ちから」や「理由」のことを「影響力」と言います。
そして、影響力には次のような種類があります。

1 報酬という力
「1,000円あげるから、これやっといて」というような、お金という報酬。

2 強制という力
「これをやらないと、ペナルティを課すぞ」というような、苦痛による強制。

3 権威という力
「父親だから、年上だから、上司だから」というような、社会的地位

4 優秀さという力
「尊敬する人から頼まれた。すごく優秀な人からの依頼」だから応じるという、
優秀さ。

5 愛情という力
「理由は無く、ただ好きな人からの依頼」だから応じるという、愛情。


▼どの影響力がいいのか?

以上の影響力。
この、どれかだけが突出しているよりも、
複合的に発揮出来るようにすることが、
自立成長型の人、自分人生の経営者には求められます。

金だけでケリをつけようという人は、金の切れ目が縁の切れ目。
愛情だけで何かをやってくれるのは理想的だが、現実的にはやや難しい。

何かを依頼し、第三者がそれに応えてくれるには、何らかの理由がある。
その理由を、たくさん、強く、深く持つ事が、
人生のリーダーとして、あるいは経営者として必要ですね。


▼最後に

世の中、わけもわからず頼んでくる人って、いますね。
あるいは、高圧的に指示ばっかする人も。

しっかりしたリーダーシップを発揮し、
エンパワーメントという考え方に則して、
有効な影響力を使う。

そんな人からの指示や依頼なら、喜んで引き受けてしまうものです。

でも、これらが欠けている人からの指示や依頼。
極力避けようとするでしょうし、
いざやる場合も、どうしてもいい加減になってしまいます。


▼マネジメントの方へ

経営者。
部下や取引先の人が動かなくては、単なる名称、役職に過ぎませんね。

会社の経営って、結局は「人の経営」みたいなものです。
経営が上手く行ってないマネジメントの人。
是非、上手く行っている経営者の行動パターンを観察してみて下さい。

必ず彼らは、強い意志によるリーダーシップの発揮。
的確なエンパワーメント。
効果的な影響力の駆使。
そのどれもがあるはずです。


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▼▼次号のテーマ▼▼  9/3配信

>>そして、協力を得るには

人の心理もわかった。
自分人生のリーダーシップの重要性や、その取り方もわかった。

それでもやはり、周りの人は協力してくれない。
どうしたらいいのでしょうか?

自立成長型シリーズの「ヒト」についてのパート。
次号(9月3日)が最終です。
お楽しみに。








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